危険物 第一類(乙1)の物質で指定されているハロゲン系の塩類:臭素酸カリウム・臭素酸ナトリウム・ヨウ素酸カリウム・ヨウ素酸ナトリウム・過ヨウ素酸ナトリウムの性状・取扱い・消火に関するページです。
消防法では「ハロゲン系の塩類」とは纏めずに臭素酸塩類・ヨウ素酸塩類・その他政令で定めるものと定義しています。
- 臭素酸塩類:臭素酸カリウム
- 臭素酸塩類:臭素酸ナトリウム
- ヨウ素酸塩類:ヨウ素酸カリウム
- ヨウ素酸塩類:ヨウ素酸ナトリウム
- その他:過ヨウ素酸ナトリウム
どれも塩素酸塩類と同じく有機物や硫黄などと混ぜて摩擦すると爆発する事があって危ないです。
今度はハロゲンと金属の塩(エン)か。
まあまた無色か白い粉(結晶)なんですけどね。
同じようなのばっかだと勉強すんのも面倒になってくるな。
これねー覚えるのに区別しにくいんですよね…
…乙3も一緒に勉強すると化学っぽくて結構面白いんですけどね…
危険物乙1 ハロゲン系の塩類の概要
【乙1 酸化性固体】
臭素酸塩類
ヨウ素酸塩類
その他 政令で定めるもの
(ハロゲン系の塩類)
物質概要
危険物乙1 試験に向けた覚え方
このページの本編に入る前に物質の基本情報を確認します。
- 全て不燃性の固体※1
- 程度の差はあるが水に溶ける
- 全て水より重い
- 貯蔵は酸と隔離する
- 日光を避けて冷暗所に保管
- 水・泡系での冷却消火※2
- 窒息消火が有効※3
※1:乙1物質そのものは燃えず助燃剤として可燃物の燃焼を支援する。
※2:無機過酸化物とは異なり水・泡系が使える。冷却・抑制消火。
※3:砂・岩・リン酸塩類を使用。
ハロゲン系の塩類は、臭素酸・ヨウ素酸と金属(アルカリ金属等)が反応して出来たものです。
臭素酸カリウムは臭素酸と金属カリウムの化合物で、臭素酸塩類に括られる。
ブロム酸カリまたはブロメートとも呼ばれる。
食品添加物として使用されるが、人体への影響面で大手製パンメーカーでは使用の是非について悩ましいような…。
【用途】
食品添加物・小麦粉の漂白・パーマ液
【関連物質】
乙3:カリウム
ヨウ素酸ナトリウムはヨウ素酸と金属ナトリウムの化合物で、ヨウ素酸塩類に括られる。
【用途】
酸化剤・医薬品・防腐剤
【関連物質】
乙1:過ヨウ素酸ナトリウム(↓)
乙3:ナトリウム
過ヨウ素酸ナトリウムはヨウ素酸ナトリウムが酸素を多く持ったもの。
消防法では第一類(乙1)のその他 政令で定めるものに括られる。
加熱すると酸素とヨウ素酸ナトリウムに分解する。別名、メタ過ヨウ素酸ナトリウム。
【用途】
酸化剤
【関連物質】
乙1:ヨウ素酸ナトリウム(↑)
乙3:ナトリウム
パン屋のくだり気になんだけど。
わ、わたしは食パンなら本仕込が好きだから…(震え声)
危険物乙1 ハロゲン系の塩類の性状
【乙1 酸化性固体】
臭素酸塩類
ヨウ素酸塩類
その他 政令で定めるもの
(ハロゲン系の塩類)
性状
危険物乙1 試験に向けた覚え方
危険物 第一類(乙1)物質のハロゲン系の塩類の性状を見ていきます。
乙1物質の中で種類を跨いでいますが、どれも似たようなものなので「まとめてこういうモノ」と粗く覚えましょう。
ざっくり纏めて覚えちゃいましょう。
ハロゲン系の塩類の性状①溶解性
臭素酸塩類・ヨウ素酸塩類等が「何に溶けるか」を整理します。
項目 | 項目の意味 |
---|---|
物質名 | 物質の名称 (下段は化学式) |
外観 | 物質(結晶・粉末)の色 |
冷水溶 | 冷たい水に溶けるか |
熱水溶 | お湯に溶けるか |
Alc溶 | アルコールに溶けるか |
潮解性 | 潮解性の有無 |
臭素酸カリウム・臭素酸ナトリウム・ヨウ素酸カリウム・ヨウ素酸ナトリウム・過ヨウ素酸ナトリウム、それぞれの溶解性を一覧にします。
物質名 | 外観 | 冷水溶 | 熱水溶 | Alc溶 | 潮解性 |
---|---|---|---|---|---|
(臭素酸塩類) KBrO3 | 臭素酸カリウム無 | ||||
(臭素酸塩類) NaBrO3 | 臭素酸ナトリウム無・白 | ||||
(ヨウ素酸塩類) KIO3 | ヨウ素酸カリウム無 | ||||
(ヨウ素酸塩類) NaIO3 | ヨウ素酸ナトリウム無 | ||||
(その他 政令で定める) NaIO4 | 過ヨウ素酸ナトリウム無 |
乙1試験対策でハロゲン系の塩類は…
・色は全て白または無色
・いずれも潮解性はない
・アルコールによく溶けるものはない
過去問で出た内容を再現してみます。
過去問での出題例
ヨウ素酸カリウムは赤褐色の結晶である?
化学好きだとうっかり踏み間違える問題ですね。
ハロゲン系の塩類の性状②数値系と特記事項
臭素酸塩類・ヨウ素酸塩類等の数値系と特に覚えるべき事をまとめます。
物質名 | 比重 | 融点 | 分解点 | 生成物 | 特記事項 |
---|---|---|---|---|---|
(臭素酸塩類) KBrO3 | 臭素酸カリウム3.3 | 350℃ | 370℃ | 臭化カリウム | 火災時に有毒なヒュームを出す 用途:小麦粉の漂白 |
(臭素酸塩類) NaBrO3 | 臭素酸ナトリウム3.3 | 381℃ | - | 臭化ナトリウム | 火災時に有毒なヒュームを出す 分解時に臭素は出ない |
(ヨウ素酸塩類) KIO3 | ヨウ素酸カリウム3.9 | 560℃ | 560℃ | - | ヨウ化カリウム水溶液に溶ける |
(ヨウ素酸塩類) NaIO3 | ヨウ素酸ナトリウム4.3 | - | - | - | |
(その他 政令で定める) NaIO4 | 過ヨウ素酸ナトリウム3.9 | 300℃ | 300℃ | ヨウ素酸ナトリウム | 食べると有害 |
過去問で出た内容を再現してみます。
過去問での出題例
ヨウ素酸カリウムは約560℃で融解・分解する?
もう一問、過去問から再現してみます。
過去問での出題例
臭素酸ナトリウムは火災時に有毒なヒュームを放出する?
ここを見ると他の乙1物質より覚えどころが判りやすいかもな。
過去問で出た事を一つずつ覚えていくのはアリですね。
危険物乙1 ハロゲン系の塩類の貯蔵取扱・消火方法
【乙1 酸化性固体】
臭素酸塩類
ヨウ素酸塩類
その他 政令で定めるもの
(ハロゲン系の塩類)
貯蔵取扱
消火方法
危険物乙1 試験に向けた覚え方
危険物 第一類(乙1)物質のハロゲン系の塩類の貯蔵取扱・消火方法方法を見ていきます。
ハロゲン系の塩類の扱いは「塩素酸塩類と同じ」と割り切って良いです。
これも無機過酸化物「以外」と同じパターンですね。
ハロゲン系の塩類の貯蔵・取扱い
臭素酸塩類・ヨウ素酸塩類等の貯蔵方法は非常にシンプルです。
- 日光を避けて冷暗所に保管
- 容器は密栓する
- 可燃物・有機物との接触
- 酸と混触
- 加熱・衝撃・摩擦
過去問で出た内容を再現してみます。
過去問での出題例
ヨウ素酸カリウムは可燃物と混合して加熱すると爆発する危険性がある?
乙1物質の貯蔵取扱は何回も同じようなの見るから嫌でも覚えるな。
ハロゲン系の塩類の消火方法と消火剤
臭素酸塩類・ヨウ素酸塩類等の消火方法は「水・泡系」と「窒息消火」が基本です。
- 水・泡系での消火
- 砂・岩での窒息消火※1
- 粉末消火剤:リン酸塩類
- 二酸化炭素※2
- ハロゲン化物
- 粉末消火剤:炭酸水素塩
※1:膨張真珠岩・膨張ひる石・乾燥砂での窒息消火は多くの危険物の消火に有効。
※2:乙1物質は二酸化炭素が持つ酸素を奪って燃焼を継続するので使用不可。
過去問で出た内容を再現してみます。
過去問での出題例
過ヨウ素酸ナトリウムの火災を大量注水で消火するのは不適切?
無機過酸化物と間違えなきゃいいだけだよな。
物質名に「過酸化」とつかなければ水OK!
危険物 第一類(乙1) ハロゲン系の塩類の試験対策
このページで出てきた内容から試験対策に使える疑似問題を作ってみました。
問題右端の+ボタンで答えが出てきます。
問1
臭素酸塩類の間違いの数は?
①.臭素が褐色なので臭素酸塩類も茶色
②.いずれも潮解性がある
③.塩素酸塩類よりも酸化力は強い
④.臭素酸塩類そのものは不燃性である
⑤.火災時には有毒なヒュームを発生する
間違っているのは2つ、①②でした。
問2
ヨウ素酸塩類の正解の数は?
①.ヨウ素酸塩類の外観は黒紫色
②.潮解性はない
③.消火方法は塩素酸塩類と同じで良い
④.分解時には酸素を発生する
⑤.アルコールに溶ける
正しいのは3つ、①⑤は間違いです。
問3
過ヨウ素酸ナトリウムの間違いはどれ?
①.水に溶ける・アルコールに溶けない
②.可燃物と混合すると爆発する
③.有害なので口に入れてはいけない
④.加熱すると分解して酸素を放出する
⑤.見た目は綺麗な紫色の粉末である
間違いは⑤、正しくは白色の結晶です。
ここの物質は名前で色を連想するとしくじるな…
それが正解な物質も多いから化学は楽しいんですけどね。
危険物 第一類(乙1)の物質で指定されているハロゲン系の塩類:臭素酸カリウム・臭素酸ナトリウム・ヨウ素酸カリウム・ヨウ素酸ナトリウム・過ヨウ素酸ナトリウムについてはここで一区切りです。
お疲れさまでした!
■危険物 第一類(乙1)ページ一覧
①:第一類の概要
②:無機過酸化物
③:塩素酸塩類
④:過塩素酸塩類等
⑤:硝酸塩類
⑥:ハロゲン系の塩類 ◀◀ NOW
⑦:重金属の塩類
⑧:その他 政令で定めるもの