危険物 第二類(乙2)の指定物質:三硫化リン・五硫化リン・七硫化リンの性状・取扱い・消火に関するページです。
- 三硫化リン(三硫化四リン)
- 五硫化リン(五硫化二リン)
- 七硫化リン(七硫化四リン)
硫化リンは硫黄とリンの化合物です。
性状や生成物でそれぞれ由来のものが出てきますので、赤リンと硫黄のページも見ておくと理解しやすいです。
硫化リンって名前からしてヤバそうな感じがするな…
変な取扱いをすると毒性ガスが出たりする危険性はありますね。
触ったら生命を奪われたり、放置したら急に爆発したりしないの?
そんなダークマター的なものではないですよw
硫化リンは身近なモノで何に使われてるんかな?
うーん…マッチの頭とか…?
危険物乙2 硫化リンの概要
【乙2 可燃性固体】
硫化リン
物質概要
危険物乙2 試験に向けた覚え方
このページの本編に入る前に物質の基本情報を確認します。
- 可燃性の固体
- 無機物の結晶※1
- 全て水より重い
- 火気厳禁
- 貯蔵は酸と隔離する
- 日光を避けて冷暗所に保管
- 容器は密栓する
- 窒息消火で消火する※2
- 水・泡系での消火はNG※3
※1:分子中に炭素(C)を持たない
※2:砂・岩・粉末消火剤(炭酸水素塩類・リン酸塩類どちらも可)で対応する
※3:硫化リンの消火に水を使うと硫化水素が発生して危険なので使用不可
硫化リンは三硫化リン(三硫化四リン)五硫化リン(五硫化二リン)七硫化リン(七硫化四リン)がメジャーなものとして存在する。数字はいずれも硫黄とリンの原子の数。
原子の数の通り、比重は三硫化リンが最も小さく七硫化リンが最も大きい。融点・沸点も同じ序列となる。
化学的には三硫化リンが最も安定している。
どれも燃焼すると有害なガス(亜硫酸ガス=二酸化硫黄)やリン酸化物を生成する。物質そのものよりも燃焼後生成物の方が厄介。
また、加水分解すると可燃性で有毒な硫化水素を発生するので湿気や水にも注意が必要。
硫化リンは消防法とは別に毒物及び劇物取締法(毒劇法)では毒物に指定されている。
何とか三兄弟みたいだな。
勉強する上では三・五・七とも大差ないので巻きましょーか。
危険物乙2 硫化リンの性状
【乙2 可燃性固体】
硫化リン
性状
危険物乙2 試験に向けた覚え方
危険物 第二類(乙2)物質の硫化リン:三硫化リン・五硫化リン・七硫化リン性状を見ていきます。
どれも同系の物質なのであまり差がないので覚えづらいですが…
ここは強引にでも「理由付け」しながら覚えましょう…
硫化リンの性状①溶解性
硫化リンが「何に溶けて」・「数値系は幾つか」を整理します。
項目 | 項目の意味 |
---|---|
物質名 | 物質の名称 (下段は化学式) |
外観 | 物質(結晶・粉末)の色 |
冷水溶 | 冷たい水に溶けるか |
熱水溶 | お湯に溶けるか |
Alc溶 | アルコールに溶けるか |
溶媒 | 溶剤に溶けるか |
比重 | 水に対する重さ |
融点 | 加熱して溶ける温度 |
引火点 | 点火したら燃える温度 |
発火点 | 加熱したら発火する温度 |
硫化リンの溶解性を一覧にします。
物質名 | 外観 | 冷水溶 | 熱水溶 | Alc溶 | 溶媒 |
---|---|---|---|---|---|
(三硫化四リン) P4S3 | 三硫化リン淡黄色 | 徐々に 加水分解 | 二硫化炭素 ベンゼン・トルエン | ||
(五硫化二リン) P2S5 | 五硫化リン淡黄色 | 徐々に 加水分解 | 加水分解 | 二硫化炭素 | |
(七硫化四リン) P4S7 | 七硫化リン淡黄色 | 徐々に 加水分解 | 速やかに 加水分解 | 二硫化炭素 |
過去問で出た内容を再現してみます。
過去問での出題例
硫化リンの中で三硫化リンが化学的に最も安定していて加水分解しにくい?
もう一問、再現してみます。
過去問での出題例
硫化リンはどれも茶褐色の結晶である?
硫化リンが二硫化炭素に溶けるのは硫黄の性質を引き継いでいるようなもんかね?
そう考えてみるのは硫黄の復習にもなって良いですね。
硫化リンの性状②数値系と特記事項
危険物 第二類(乙2)物質の硫化リンの性状から、生成物・特記事項を見ていきます。
物質名 | 比重 | 融点 | 沸点 | 発火点 | 生成物 | 特記事項 |
---|---|---|---|---|---|---|
(三硫化四リン) P4S3 | 三硫化リン2.0 | 172 ℃ | 407 ℃ | 100 ℃ | 【有毒】 二酸化硫黄 リン酸化物 (十酸化四リン) | ・三硫化リンが化学的には一番安定 ・加水分解すると硫化水素とリン酸を発生 ・硫化水素は比重1.2’(空気より重い) ・硫化水素は可燃性、有毒、腐卵臭がある |
(五硫化二リン) P2S5 | 五硫化リン2.1 | 286 ℃ | 514 ℃ | 142 ℃ | 同上 | 同上 |
(七硫化四リン) P4S7 | 七硫化リン2.2 | 310 ℃ | 523 ℃ | - | 同上 | 同上 |
過去問で出た内容を再現してみます。
過去問での出題例
硫化リンが加水分解して発生する硫化水素は可燃性で空気より重いガスである?
もう一問、過去問から再現してみます。
過去問での出題例
硫化水素は窒息性はあるが無毒で臭いは腐魚臭がする?
嫌なニオイには大抵、硫黄が絡むもんなぁ。
硫化リンは生成物や特記事項はみんな同じと割り切ってOK!
危険物乙2 硫化リンの貯蔵取扱・消火方法
【乙2 可燃性固体】
硫化リン
貯蔵取扱
消火方法
危険物乙2 試験に向けた覚え方
危険物 第二類(乙2)物質の硫化リン:三硫化リン・五硫化リン・七硫化リンの貯蔵取扱・消火方法を見ていきます。
結論、3物質とも同じである事と、硫黄・赤リンとほとんど変わらないので簡単です、
ここは赤リン・硫黄の復習みたいなものですね。
硫化リンの貯蔵・取扱い
硫化リンは「基本的な危険物の扱い」を弁えていれば問題ありません。
- 金属製またはガラス容器に保存
- 換気の良い冷暗所に保管
- 容器は密栓する
- 酸化性物質と一緒に貯蔵
- 加熱・衝撃・摩擦
過去問で出た内容を再現してみます。
過去問での出題例
硫化リンの貯蔵容器は試薬用のポリエチレン製のもので良い?
容器の素材以外は特別な事は何もないな。
硫化リンの消火方法と消火剤
硫化リンの消火方法は「基本的に窒息消火」・「水系と化学物質はNG」くらいの整理で良いです。
- 岩・砂での窒息消火※1
- 粉末消火剤
- 不活性ガス※2
- 水・泡系は全てNG
- 二酸化炭素※3
- ハロゲン化物
※1:膨張真珠岩・膨張ひる石・乾燥砂での窒息消火は多くの危険物の消火に有効
※2:アルゴンガスなど
※3:二酸化炭素が持つ酸素を奪って燃焼を継続するので使用不可
過去問で出た内容を再現してみます。
過去問での出題例
硫化リンの消火に不活性ガス(アルゴンガス)は有効?
もう一問、再現してみます。
過去問での出題例
硫化リンの消火に二酸化炭素を使った窒息消火は有効?
結局は性状を重視して勉強するって話だな。
硫化リンは水ぶっかけNG!
危険物乙2 硫化リンの試験対策
このページで出てきた内容から試験対策に使える疑似問題を作ってみました。
問題右端の+ボタンで答えが出てきます。
問1
硫化リンについて間違いの数は?
①.冷水・アルコールによく溶ける
②.燃焼後の生成物は無毒で食べられる
③.加水分解するとリン化水素を発生
④.金属容器かガラス容器に密閉保存
⑤.消火に水・泡系は使えない
間違っているのは4つ、①②③⑤でした。
問2
三硫化リンについて正解の数は?
①.硫化リンの中で化学的に最も安定
②.加水分解で発生したガスは無毒
③.ベンゼン・二硫化炭素に溶ける
④.外観は赤褐色である
⑤.衝撃や摩擦に対し安定している
正しいのは2つ、②④⑤は間違いです。
問3
五硫化リン・七硫化リンの間違いはどれ?
①.燃焼後の生成物は複数あり有毒
②.加水分解で発生するガスは腐卵臭
③.七硫化リン硫化リンで最も比重が大
④.消火には水・泡系での消火方法有効
⑤.消火に粉末消火剤を使用できる
間違いは④、正しくは消火に水・泡系はNGです。
硫化リンは性状・貯蔵・消火が混ざった問題でもあんま難しく感じないのは何でかね?
単に簡単だからかな…?まあ乙2は全体的にこんな感じですよ。
…乙2は危険物の中で難易度的な意味で「最弱」。いずれおっさんも乙5のカオスさに苦しむ事になるでしょう…
危険物 第二類(乙2)の物質で指定されている硫化リン:三硫化リン・五硫化リン・七硫化リンについてはここで一区切りです。
お疲れさまでした!