危険物乙2-単体:アルミニウム粉などの性状と炎色反応・貯蔵・消火方法

危険物 第二類(乙2)指定物質の金属粉類:アルミニウム粉・亜鉛粉・鉄粉・マグネシウム(粉・粒)の性状・取扱い・消火に関するページです。

消防法では「金属粉類」とは括らずに鉄粉・金属粉・マグネシウムを別々に定義していますが、性質や見るべきポイントが似ているので、このページに纏めています。

このページで出てくる物質は・・・
  1. 金属粉:アルミニウム粉
  2. 金属粉:亜鉛粉
  3. 鉄粉
  4. マグネシウム(粉・粒)
おっさん

これ、工場の事故とかで聞くやつだよな。

でぃでぃ

そうなんです。
普段は燃えない金属も粉にすると燃えたり爆発したりします。

おっさん

アレだ、粉だと空気に触れる面積がでかくなるから燃えるんだっけ。

でぃでぃ

ソレですソレ!おっさんってたまにキレが良くなりますよね 笑

おっさん

まー勉強はできねーが理科の実験とかは結構好きだぞ?

INDEX

危険物乙2 金属粉類の概要

【乙2 可燃性固体】
金属粉(アルミニウム・亜鉛)

鉄粉
マグネシウム(粉・粒)
物質概要
危険物乙2 試験に向けた覚え方

このページの本編に入る前に物質の基本情報を確認します。

基本情報:金属粉類
  • 可燃性の固体
  • 無機物である※1
  • 全て水より重い
  • いずれも還元性が強い
  • 火気厳禁
  • 貯蔵は酸・アルカリと隔離
  • 湿気を避けて冷暗所に保管
  • 容器は密栓する
  • 粉じん爆発に注意
  • 窒息消火で消火する※2
  • 水・泡系での消火はNG※3
補足:金属粉類

※1:分子中に炭素(C)を持たない

※2:砂・岩・粉末消火剤(炭酸水素塩類)で対応する

※3:水を使うと水素が発生して危険なので使用不可

アルミニウム粉 について

アルミニウム粉は金属:アルミニウムの粉末状態で、150㎛未満の大きさのものを50%以上含むと消防法での危険物として扱われる。粉じん爆発の危険性もある。

アルミニウムは金属の中でも両性元素と呼ばれ、酸・アルカリどちらにも反応して水素を発生する。

強力な還元剤として作用するので、水と反応すれば水から酸素をブン取って残った水素を発生させたり、二酸化炭素からも二酸化炭素中の酸素を奪って燃えたりもする。

【用途】
塗料・顔料インキの原料・指紋の検出

【関連物質】
乙3:炭化アルミニウム
高圧ガス:水素
毒物劇物:リン化アルミニウム(特定毒物)

亜鉛粉 について

亜鉛粉は金属:亜鉛の粉末状態で、燃えやすいので消防法での危険物として扱われる。粉じん爆発の危険性もある。

消防法での危険物として扱われる基準はアルミニウム粉と同じ

亜鉛は金属の中でも両性元素と呼ばれ、酸・アルカリどちらにも反応して水素を発生する。

強力な還元剤として作用する。

性質はアルミニウム粉と似ているが、比重はアルミニウム粉の3倍近く(重い)になる。

【用途】
防錆塗料・樹脂・火薬

【関連物質】
乙3:ジエチル亜鉛
毒物劇物:リン化亜鉛・塩化亜鉛・硫酸亜鉛(いずれも劇物)

鉄粉 について

鉄粉は金属:鉄の粉末状態で、53㎛未満のサイズの粉を50%以上含むと消防法での危険物として扱われる。

粉じん爆発の危険性もある。

酸と反応して水素を発生するが、アルカリとは反応しない。

強力な還元剤として作用する。

【用途】
使い捨てカイロの発熱剤・コピー機のトナー

マグネシウム(粉・粒) について

マグネシウム粉は金属:マグネシウムの粉末・微細な粒の状態で、2㎜未満のサイズのものは消防法での危険物として扱われる。

粉じん爆発の危険性もある。

マグネシウムは元素の周期表上では2族だがアルカリ土類金属には括られない。性質はよく似ているが…

酸と反応して水素を発生するが、アルカリとは反応しない。

強力な還元剤として作用する。

【用途】
アルミニウムへの添加剤・試薬

【関連物質】
乙1:過酸化マグネシウム ほか

おっさん

どれも同じようなモンだな。

でぃでぃ

ここは乙3でアルカリ金属等の単体を勉強する前の慣らしみたいな感じかも…

危険物 乙2 金属粉類の性状

【乙2 可燃性固体】
金属粉(アルミニウム・亜鉛)
鉄粉
マグネシウム(粉・粒)
性状
危険物乙2 試験に向けた覚え方

危険物 第二類(乙2)物質の金属粉類:アルミニウム粉・亜鉛粉・鉄粉・マグネシウム(粉・粒)の性状を見ていきます。

いずれも性質は似てはいるけど少しずつ異なり、試験対策の上では特記事項が一番重要かもです。

でぃでぃ

炎色反応を覚えるのはマストになりますね。

金属粉類の性状①反応性

金属粉類が「何と反応するか」を整理します。

項目項目の意味
物質名物質の名称
(下段は化学式)
外観物質(結晶・粉末)の色
水溶水に溶けるか
酸と反応するか
アルカリアルカリと反応するか
その他その他物質と反応するか
炎色反応燃やした時の炎の色
比重水に対する重さ
融点加熱して溶ける温度
乙2物質の性状項目

〇=よく反応する
△=あまり反応しない
✕=反応しない

アルミニウム粉・亜鉛粉・鉄粉・マグネシウム(粉・粒)の反応性を一覧にします。

スクロールできます
物質名外観アルカリその他
アルミニウム粉
(両性元素)
Al
銀白色ハロゲン
亜鉛粉
(両性元素)
Zn
灰~青ハロゲン
鉄粉
Fe
灰白色ハロゲン
マグネシウム
(粉末・粒状)
Mg
銀白色ハロゲン
硫黄・炭素
窒素
金属粉類の反応性

両性元素=酸・アルカリ両方に反応するもの、ここではアルミ・亜鉛です。

過去問で出た内容を再現してみます。

過去問での出題例

鉄粉は水酸化ナトリウム水溶液に反応して溶ける?

答え:溶けない。鉄は両性元素でなく、アルカリとは反応しない

もう一問、再現してみます。

過去問での出題例

亜鉛粉は銀白色の金属粉?

答え:ちがう。亜鉛は金属粉類の中で唯一、灰色~青の外観

おっさん

どの金属粉も水とは反応して水素を出すんだったな。

でぃでぃ

そーです。水素はれっきとした「危ないモノ」なので、むやみに発生させてはダメです。

金属粉類の性状②数値系と特記事項

アルミニウム粉・亜鉛粉・鉄粉・マグネシウム(粉・粒)の性状から、数値系・特記事項を見ていきます。

スクロールできます
物質名炎色比重融点反応後生成物特記事項
アルミニウム粉
(両性元素)
Al
白色2.7660
酸化アルミニウム・燃焼後は無毒、白色の酸化ALを生成
・直径150μmの網を50%以上通ると危険物
亜鉛粉
(両性元素)
Zn
青緑7.1420
酸化亜鉛・乾いたハロゲンとは無反応、水分あると反応
・空気中では表面に灰白色の酸化被膜で保護

・直径150μmの網を50%以上通ると危険物
鉄粉
Fe
7.9酸化鉄・酸化後は黒・赤褐色の酸化鉄を生成
・直径53μmの網を50%以上通ると危険物
マグネシウム
(粉・粒)
Mg
白光1.7650
酸化マグネシウム
(窒素と反応した場合)
窒化マグネシウム
・熱水と反応した場合、水酸化Mgを生成
・空気中では表面に灰白色の酸化被膜で保護
・直径2mmの網を通ると危険物
数値系 外観は上の表から再掲

金属粉類はいずれも還元性=酸化されやすく、生成物は酸化●●となる事が多い。

酸化物を還元する反応を「テルミット反応」と言い、試験問題では用語として使われる。

過去問で出た内容を再現してみます。

過去問での出題例

マグネシウムの比重はアルミニウムより小さく、また1よりも小さい?

答え:比重はMg<Alであるが、1より小さい(水より軽い)訳ではない

もう一問、過去問から再現してみます。

過去問での出題例

アルミニウムと酸化鉄を混ぜて加熱すると酸化アルミ+還元された鉄の単体が得られる?

答え:合っている。この反応はアルミニウムの還元性を使ったもの

おっさん

あんま考えた事なかったけど、単体の金属は還元性なんだな。

でぃでぃ

そーです。だから酸化して錆びやすいんですよね。

でぃでぃ

…純粋な金やプラチナは酸化しないけど、これを説明するにはイオン化傾向の解説も必要になるから、ここでは金属は基本的に還元性って事でいいかな…

危険物乙2 金属粉類の貯蔵取扱・消火方法

【乙2 可燃性固体】
金属粉(アルミニウム・亜鉛)
鉄粉
マグネシウム(粉・粒)
貯蔵取扱
消火方法
危険物乙2 試験に向けた覚え方

危険物 第二類(乙2)物質の金属粉類:アルミニウム粉・亜鉛粉・鉄粉・マグネシウム(粉・粒)の貯蔵取扱・消火方法を見ていきます。

金属粉類には何をするにも「水はダメゼッタイ!」です。

でぃでぃ

乙1の無機過酸化物でも「水はダメゼッタイ」でしたね。

金属粉類の貯蔵・取扱い

金属粉類の貯蔵は「水はダメゼッタイ」「反応しそうな物質と近づけない」のがお約束です。

適切:金属粉類
  • 湿気を避けて冷暗所に保管
  • 容器は密栓する
  • 粉じん爆発に注意した取扱い
不適切:金属粉類
  • 水分と湿気
  • 酸・アルカリと一緒に貯蔵
  • ハロゲン類との混触
  • 加熱・衝撃・摩擦
  • 静電気などの点火源

過去問で出た内容を再現してみます。

過去問での出題例

亜鉛粉は湿気を帯びると酸化が進み、酸化熱が溜まる事で自然発火する事がある?

ある。だから「水はダメゼッタイ!」となる

もう一問、過去問から再現してみます。

過去問での出題例

マグネシウムの貯蔵では乾燥した塩化ナトリウムと近づけても問題ない?

答え:問題ない。食塩は金属粉類の消火時に消火剤として使用できる

おっさん

粉だから粉じん爆発への注意はしていないとヤバいな。

危険物乙2 金属粉類の消火方法と消火剤

金属粉類の消火方法は「窒息消火」です。

基本:金属粉類の消火
  • 岩・砂での窒息消火※1
  • 粉末消火剤:炭酸水素塩類
  • 不活性ガス※2
  • 水・泡系は全てNG
  • 二酸化炭素※3
  • ハロゲン化物
補足:金属粉類の消火

※1:膨張真珠岩・膨張ひる石・乾燥砂での窒息消火は多くの危険物の消火に有効

※2:アルゴンガスなど

※3:二酸化炭素が持つ酸素を奪って燃焼を継続するので使用不可

粉末消火剤でリン酸塩類は「おかしな反応」をするので使用NGです。

過去問で出た内容を再現してみます。

過去問での出題例

マグネシウムの火災には霧状の水の使用が有効?

そんな訳がない。金属粉類の消火に「水はダメゼッタイ!」

もう一問、再現してみます。

過去問での出題例

アルミニウム粉の火災に乾燥砂を使用するのは有効?

答え:有効。金属粉類の消火は窒息消火が第一

おっさん

水は使えない…金属粉類に水は使えない…ダメゼッタイ…

でぃでぃ

ハロゲン化物とかでも、金属粉類にはヤクブーツはやめろ!です。

危険物乙2 金属粉類の試験対策

このページで出てきた内容から試験対策に使える疑似問題を作ってみました。

問題右端の+ボタンで答えが出てきます。

問1
Al粉について間違いの数は?
 ①.銀白色の外観で炎色反応は白色
 ②.アルカリには反応しない
 ③.150㎛の網を50%以上通ると危険物
 ④.還元性の物質である
 ⑤.水と反応して酸素を発生する

間違っているのは2つ、②⑤でした。

問2
Zn粉について正解の数は?
 ①.炎色反応は青緑を示す
 ②.酸には反応しない
 ③.高温で硫黄やハロゲンと反応する
 ④.空気中で表面に酸化被膜を形成する
 ⑤.150㎛の網を50%以上通ると危険物

正しいのは4つ、②は間違いです。

問3
Fe粉について間違いはどれ?
 ①.粉じん爆発する危険性がある
 ②.53μmの網を50%以上通ると危険物
 ③.酸化後は黒・赤褐色の酸化鉄となる
 ④.消火に乾燥砂・膨張真珠岩を使用
 ⑤.アルカリに反応して水素を発生する

間違いは⑤、鉄はアルカリに反応しないです。

問4
Mg(粉・粒)について間違いはどれ?
 ①.粉じん爆発する危険性がある
 ②.2mmの網を通ると危険物となる
 ③.高温で窒素と反応し窒化Mgを生成
 ④.消火にハロゲン化物を使用した
 ⑤.酸に反応して水素を発生する

間違いは④、ハロゲン化物は反応するので使用NGです。

おっさん

金属粉類も慣れちまえば難しくはないな。

でぃでぃ

個人的に金属粉類は化学っぽくて好きですね…乙3のアルカリ金属等も面白いですよ。

危険物 第二類(乙2)の物質で指定されている金属粉・鉄粉・マグネシウムについてはここで一区切りです。

でぃでぃ

お疲れさまでした!

危険物 第二類(乙2)ページ一覧
①:第二類の概要
②:赤リン・硫黄
③:硫化リン
④:金属粉類 ◀◀ NOW
⑤:引火性固体

お勉強の継続のために共有&ブクマ!
  • URLをコピーしました!
INDEX