危険物 第一類(乙1)の物質で指定されている重金属の塩類:過マンガン酸カリウム・過マンガン酸ナトリウム・重クロム酸カリウム・重クロム酸アンモニウムの性状・取扱い・消火に関するページです。
消防法では「重金属の塩類」とは纏めずに過マンガン酸塩類・重クロム酸塩類と定義しています。
- 過マンガン酸塩類:過マンガン酸カリウム
- 過マンガン酸塩類:過マンガン酸ナトリウム
- 重クロム酸塩類:重クロム酸カリウム
- 重クロム酸塩類:重クロム酸アンモニウム
どれも塩素酸塩類と同じく有機物や硫黄などと混ぜて摩擦すると爆発する事があって危ないです。
重金属って日常生活ではあまり馴染みないよな?
身近ではあるんですけど、身体に良くないので食品に入れたりしないですからね。
重金属は名前の通り重い金属なんだっけ?
一応、比重4.0以上っていう基準があります。
数値は想像つかんけど鉛とかも重い金属だから重金属になるのか。
そーです。鉛はすごく重い割には材料として安いので「重り」として使われますね。
危険物乙1 重金属の塩類の概要
【乙1 酸化性固体】
過マンガン酸塩類
重クロム酸塩類
(重金属の塩類)
物質概要
危険物乙1 試験に向けた覚え方
このページの本編に入る前に物質の基本情報を確認します。
- 全て不燃性の固体※1
- 程度の差はあるが水に溶ける
- 全て水より重い
- 色がはっきりした物質
- 貯蔵は酸と隔離する
- 日光を避けて冷暗所に保管
- 水・泡系での冷却消火※2
- 窒息消火が有効※3
※1:乙1物質そのものは燃えず助燃剤として可燃物の燃焼を支援する。
※2:無機過酸化物とは異なり水・泡系が使える。冷却・抑制消火。
※3:砂・岩・リン酸塩類を使用。
過マンガン酸・重クロム酸と金属(アルカリ金属等)やアンモニアが反応して出来たものです。
過マンガン酸ナトリウムは過マンガン酸と金属ナトリウムの化合物で、過マンガン酸塩類に括られる。
過マンガン酸ソーダとも呼ばれる。
乙1物質では珍しく有色の物質で赤紫の外観で、水溶液は赤紫色となる。
【用途】
消毒剤・漂白剤・試薬
【関連物質】
乙3:ナトリウム
重クロム酸カリウムは重クロム酸と金属カリウムの化合物で、重クロム酸塩類に括られる。
二(に)クロム酸カリウムとも呼ばれる。
乙1物質では珍しく有色の物質で橙赤(濃いオレンジ)色の外観。
消防法とは別で劇物に指定されている。
【用途】
写真・マッチの着火剤・爆薬の原料
【関連物質】
乙3:カリウム
※毒物劇物としての重クロム酸カリウム
重クロム酸アンモニウムは重クロム酸とアンモニアの化合物で、重クロム酸塩類に括られる。
二(に)クロム酸アンモニウムとも呼ばれる。
乙1物質では珍しく有色の物質で橙黄(オレンジ)色の外観。
【用途】
触媒・染色・パイロテクニクス
【関連物質】
乙3:カリウム
※毒物劇物としての重クロム酸カリウム
またアンモが出てきたぞ。
はい、これも試験対策では要注意物質です。
危険物乙1 重金属の塩類の性状
【乙1 酸化性固体】
過マンガン酸塩類
重クロム酸塩類
(重金属の塩類)
性状
危険物乙1 試験に向けた覚え方
危険物 第一類(乙1)物質の重金属の塩類(過マンガン酸塩類・重クロム酸塩類)の性状からを見ていきます。
重金属の塩類は外観(色)に特徴があったり、試験で物質を特定できるキーワードがあるので乙1の中では少し覚えやすいです。
特徴がないと覚えるのが無理やりになりますもんね…
重金属の塩類の性状①溶解性
過マンガン酸塩類・重クロム酸塩類等が「何に溶けるか」を整理します。
項目 | 項目の意味 |
---|---|
物質名 | 物質の名称 (下段は化学式) |
外観 | 物質(結晶・粉末)の色 |
冷水溶 | 冷たい水に溶けるか |
熱水溶 | お湯に溶けるか |
Alc溶 | アルコールに溶けるか |
潮解性 | 潮解性の有無 |
過マンガン酸カリウム・過マンガン酸ナトリウム・重クロム酸カリウム・重クロム酸アンモニウム、それぞれの溶解性を一覧にします。
物質名 | 外観 | 冷水溶 | 熱水溶 | Alc溶 | 潮解性 |
---|---|---|---|---|---|
(過マンガン酸塩類) KMnO4 | 過マンガン酸カリウム赤紫 | 黒紫||||
(過マンガン酸塩類) NaMnO4 | 過マンガン酸ナトリウム赤紫 | ||||
(重クロム酸塩類) K2Cr2O7 | 重クロム酸カリウム橙赤 | ||||
(重クロム酸塩類) (NH4)2Cr2O7 | 重クロム酸アンモニウム橙黄 |
乙1試験対策で重金属の塩類は…
・物質それぞれの色を覚える
・いずれも水によく溶ける
・アルコールに溶けるのは2つ
・過マンガン酸カリウム
・重クロム酸アンモニウム
・潮解性があるは過マンガン酸Naだけ
過去問で出た内容を再現してみます。
過去問での出題例
過マンガン酸カリウムは黒紫または赤紫の色をした結晶である?
色のある結晶は水溶液もその色になりやすいですね。
重金属の塩類の性状②数値系と特記事項
過マンガン酸塩類・重クロム酸塩類の数値系と特に覚えるべき事をまとめます。
物質名 | 比重 | 融点 | 分解点 | 生成物 | 特記事項 |
---|---|---|---|---|---|
(過マンガン酸塩類) KMnO4 | 過マンガン酸カリウム2.7 | 240℃ | 200℃ | マンガン酸カリウム 酸化マンガン | 塩酸と反応し塩素を発生 熱分解すると 有毒なヒュームを発生 |
(過マンガン酸塩類) NaMnO4 | 過マンガン酸ナトリウム2.5 | 170℃ | - | - | 同上 |
(重クロム酸塩類) K2Cr2O7 | 重クロム酸カリウム2.7 | 398℃ | 500℃ | - | 腐食性・有毒 苦味・金属味 |
(重クロム酸塩類) (NH4)2Cr2O7 | 重クロム酸アンモニウム2.2 | 185℃ | 185℃ | 酸化クロム 窒素 | ヒドラジンと混触すると 爆発する |
過去問で出た内容を再現してみます。
過去問での出題例
過マンガン酸カリウムの水溶液に過酸化水素を加えた時、過酸化水素は還元剤として作用する?
もう一問、過去問から再現してみます。
過去問での出題例
重クロム酸アンモニウムはオレンジ色の結晶で約185℃まで加熱すると分解する?
やっぱ色があるとイメージつきやすいな。
この辺はいいんですけどね、黄色でイメージする物質は多くて大変ですよ?
危険物 乙1 重金属の塩類の貯蔵取扱・消火方法
【乙1 酸化性固体】
マンガン酸塩類
重クロム酸塩類
(重金属の塩類)
貯蔵取扱
消火方法
危険物乙1 試験に向けた覚え方
危険物 第一類(乙1)物質の重金属の塩類(過マンガン酸塩類・重クロム酸塩類)の貯蔵取扱・消火方法を見ていきます。
基本的に塩素酸塩類と同じパターンですが、過マンガン酸塩類の貯蔵は1つだけ注意点ありです。
まあ注意点といっても特別なものでもなく…
重金属の塩類の貯蔵・取扱い
過マンガン酸塩類・重クロム酸酸塩類の貯蔵方法は非常にシンプルです。
- 日光を避けて冷暗所に保管
- 容器は密栓する
- 遮光(着色)瓶に保存
- 可燃物・有機物との接触
- 酸と混触
- 加熱・衝撃・摩擦
※重クロム酸塩類を遮光瓶に保存しても間違いではないです。過マンガン酸塩類は「遮光が必須」と覚えておきましょう。
過去問で出た内容を再現してみます。
過去問での出題例
過マンガン酸カリウムの貯蔵は日光での分解を防ぐために遮光瓶を使うのが良い?
これだけ刷り込まれたら過マンガン酸カリに日光NGって嫌でも覚えてしまうな。
重金属の塩類の消火方法と消火剤
過マンガン酸塩類・重クロム酸塩類の消火方法は「水・泡系」と「窒息消火」が基本です。
※塩素酸塩類と同じです。
- 水・泡系での消火
- 砂・岩での窒息消火※1
- 粉末消火剤:リン酸塩類
- 二酸化炭素※2
- ハロゲン化物
- 粉末消火剤:炭酸水素塩
※1:膨張真珠岩・膨張ひる石・乾燥砂での窒息消火は多くの危険物の消火に有効。
※2:乙1物質は二酸化炭素が持つ酸素を奪って燃焼を継続するので使用不可。
過去問で出た内容を再現してみます。
過去問での出題例
重クロム酸アンモニウムは火災などの熱で分解すると窒素を発生する?
これ、消火の問題か?
過去問で重クロム酸塩類の消火がなかったので、フェイントという事でw
危険物乙1 重金属の塩類の試験対策
このページで出てきた内容から試験対策に使える疑似問題を作ってみました。
問題右端の+ボタンで答えが出てきます。
問1
過マンガン酸塩類の間違いの数は?
①.無色の固体である
②.塩酸と反応して塩素を発生
③.熱分解で有毒なヒュームを発生
④.加熱すると水素を発生する
⑤.水と反応して爆発する
間違っているのは3つ、①④⑤でした。
問2
重クロム酸塩類の正解の数は?
①.色はオレンジ系の外観をしている
②.K2Cr2O7は有毒で腐食性がある
③.(NH4)2Cr2O7はアルコールに溶ける
④.(NH4)2Cr2O7は分解し窒素を発生
⑤.消火方法は過酸化カリウムと同様
正しいのは4つ、⑤は間違いです。
問3
過マンガン酸カリウムの間違いの数は?
①.加熱すると約2,000℃で分解する
②.太陽光で分解する
③.過酸化水素水よりも酸化力が強い
④.消火方法は塩素酸塩類と同様
⑤.濃硫酸と触れると爆発する
間違いは①、正しくは200℃です。
急に選択肢に化学式を出してくれるなよ…
まあ過去問でも問題文で化学式が登場する事もありますからね。
焦ったら原子の並びを日本語の読みの反対(後ろ)から読んだらOKですよ。
危険物 第一類(乙1)の物質で指定されている重金属の塩類:過マンガン酸カリウム・過マンガン酸ナトリウム・重クロム酸カリウム・重クロム酸アンモニウムについてはここで一区切りです。
お疲れさまでした!
■危険物 第一類(乙1)ページ一覧
①:第一類の概要
②:無機過酸化物
③:塩素酸塩類
④:過塩素酸塩類等
⑤:硝酸塩類
⑥:ハロゲン系の塩類
⑦:重金属の塩類 ◀◀ NOW
⑧:その他 政令で定めるもの