危険物乙3-単体:リチウムなど金属の性状・貯蔵取扱・消火方法

危険物 第三類(乙3)の指定物質:アルカリ金属:カリウム・ナトリウム・リチウム+アルカリ土類金属:カルシウム・バリウムの性状・保存方法・消火に関するページです。

消防法では「アルカリ金属等」とは括らずにカリウム・ナトリウム・アルカリ金属~を別々に定義していますが、性質や見るべきポイントが似ているので、このページに纏めています。

このページで出てくる物質は・・・
  1. アルカリ金属:カリウム
  2. アルカリ金属:ナトリウム
  3. アルカリ金属:リチウム
  4. アルカリ土類金属:カルシウム
  5. アルカリ土類金属:バリウム

黄リンとは異なり、自然発火性と禁水性を併せもつものが多いです。

おっさん

乙2でも「金属そのもの」が危険物に指定されていたけど、こっちでも似た感じかね?

でぃでぃ

そーですね。こっちは更に反応性が強くて保存方法とかも初見では驚くのもあります。

おっさん

カリウムとかサプリでしか知らんかったけど、危険物でもあるのか…

でぃでぃ

乙3はこういうのが見てて楽しいんですよ。

おっさん

危険物の目線だとアルカリ金属とアルカリ土類金属ってどう違うの?

でぃでぃ

うーん…アルカリ金属の方が反応しやすくて危険性が高いって事かな…

INDEX

危険物乙3 アルカリ金属等の概要

【乙3 自然発火性・禁水性】
アルカリ金属
アルカリ土類金属
物質概要
危険物乙3 試験に向けた覚え方

このページの本編に入る前に物質の基本情報を確認します。

基本情報:アルカリ金属等
  • 自然発火性+禁水性※1
  • 無機物である※2
  • いずれも還元性が強い
  • 酸・アルカリと隔離
  • ハロゲンと隔離
  • 容器は密栓する
  • 窒息消火で消火する※3
  • 水・泡系での消火はNG※4
補足:アルカリ金属等

※1:リチウムは乾燥した空気中では自然発火せず、自然発火性物質ではない

※2:分子中に炭素(C)を持たない

※3:砂・岩・粉末消火剤(炭酸水素塩類)で対応する

※4:水を使うと水素が発生して危険なので使用不可

カリウム について

カリウムは周期表の1族に属しアルカリ金属に括られ、ポタシウムとも呼ばれる。

身近なものではサプリメントがあるが、カリウム摂取は多すぎても少なすぎても健康障害を引き起こす。実際に過剰摂取した際、体内の塩分排出がされ過ぎて眩暈やふらつきが出ていた事もあった。

うまく摂取量をコントロールすれば体のむくみ解消をしやすくなるので普段の食事でどれ位のカリウムを摂取しているか計算してみると良さそう。

空気中での自然発火性と禁水性を併せ持つので、貯蔵は灯油や流動パラフィンといった保護液中に沈めて保管する必要がある。

消防法とは別に毒物劇物取締法で劇物指定されている。

【用途】
食品・肥料・試薬・化学分析

【関連物質】
乙1:塩素酸カリウム
毒物劇物:カリウム(劇物)

ナトリウム について

ナトリウムは周期表の1族に属しアルカリ金属に括られ、ソーダ・ソディウムとも呼ばれる。

身近なものでは塩素とナトリウムの化合物である食塩があるが過剰摂取は腎臓に大ダメージを喰らう事になるので要注意。

カリウムと同様に空気中での自然発火性と禁水性を併せ持つので、貯蔵は灯油や流動パラフィンといった保護液中に沈めて保管する必要がある。

消防法とは別に毒物劇物取締法で劇物指定されている。

【用途】
食品・薬品・NaS電池の負極

【関連物質】
乙1:過酸化ナトリウム
乙5:アジ化ナトリウム
毒物劇物:ナトリウム(劇物)

リチウム について

リチウムは周期表の1族に属しアルカリ金属に括られる。実際の性質はアルカリ土類金属寄り。

リチウムは極めて軽い金属なので、危険物の試験対策で比重を覚える際はリチウムの化合物も含めて比重が小さい事を考えると良い。

第三類物質の中で唯一、禁水性のみの物質となる。実際は自然発火しない訳ではなく、湿度の高い場所では湿気と反応して自然発火する事がある。

【用途】
食品・薬品・NaS電池の負極

【関連物質】
乙3:水素化リチウム
乙3:ノルマルブチルリチウム

カルシウム について

カルシウムは周期表の2族に属しアルカリ土類金属に括られる。

カルシウムと言えば骨や歯を連想するので白い粉末のイメージがあるが、単体のカルシウムは銀白色でいわゆる金属の外観をしている。

実際に金属であるので電気の通りが良く、鉄よりも電気を通しやすい良導体である。

食品としてのカルシウムは不足すれば骨粗鬆症になり、過剰摂取は骨が固くなりすぎて骨折しやすくなるのでサプリ等の摂取はほどほどに。

【用途】
食品・チョーク・セメント・漆喰

【関連物質】
乙1:次亜塩素酸カルシウム
乙3:リン化カルシウム
乙3:炭化カルシウム

バリウム について

バリウムは周期表の2族に属しアルカリ土類金属に括られる。

バリウムと言えば胃の検査で大量に飲まされるアレを連想するが、単体のバリウムは銀白色でいわゆる金属の外観をしている。

バリウム単体での用途は限定的だが、化合物は様々な分野で使われる。

【用途】
鋼の脱酸剤・合金

おっさん

カルシウムやバリウムも金属だから見た目も銀色なんだな。

でぃでぃ

身近なものは化合物なので白い粉が多いですが、単体はいわゆる金属ですね。

危険物乙3 アルカリ金属等の性状

【乙3 禁水性・自然発火性】
アルカリ金属

アルカリ土類金属
性状
危険物乙3 試験に向けた覚え方

危険物 第三類(乙3)物質のアルカリ金属等:カリウム・ナトリウム・リチウム・カルシウム・バリウムの性状を見ていきます。

ここでは炎色反応での色が重要となります。

でぃでぃ

何を燃やすと何色の炎になるかは試験で確実に出ます。

アルカリ金属等の性状①性質と数値系

アルカリ金属等の性質と数値系で覚えるべき部分をピックアップします。

スクロールできます
物質名状態毒性等比重融点
カリウム
(アルカリ金属)
K
銀白色柔らかな
固体
腐食性0.8664℃
ナトリウム
(アルカリ金属)
Na
銀白色柔らかな
固体
腐食性0.9798℃
リチウム
(アルカリ金属)
Li
銀白色固体0.50179℃
カルシウム
(アルカリ土類金属)
Ca
銀白色固体1.55842℃
バリウム
(アルカリ土類金属)
Ba
銀白色固体3.60725℃
アルカリ金属の性質と数値系

毒性はアルカリ金属 >アルカリ土類金属ですが、アルカリ土類金属も全くの無害ではありません。

過去問で出た内容を再現してみます。

過去問での出題例

カリウムは柔らかく、融点は100℃より低い?

答え:その通り。カリウムとナトリウムはナイフで切断できるほど柔らかい

もう一問、過去問から再現してみます。

過去問での出題例

アルカリ金属・アルカリ度類金属の中で最も比重が小さいのはリチウム?

答え:その通り。リチウムの比重は0.5で、他の乙3物質の学習にも関わる

おっさん

単体の金属だと難しく感じなくなるのは何でだろうな…?

アルカリ金属等の性状② 炎色反応・生成物と特記事項

アルカリ金属等の性状から「炎色反応」「生成物」「特記事項」を見ていきます。

スクロールできます
物質名炎色燃焼後反応生成物特記事項
カリウム
(アルカリ金属)
K

赤紫
単体だと水より軽い
ナイフで切断できる程柔らかい
ナトリウム
(アルカリ金属)
Na
(アルコールと反応)
アルコキシド
同上
リチウム
(アルカリ金属)
Li
酸化リチウムハロゲン化物カリウム・ナトリウムより反応性は弱い
金属で一番軽い
乙3物質で唯一、禁水性のみ
カルシウム
(アルカリ土類金属)
Ca
橙赤酸化カルシウム水酸化カルシウム
水素化カルシウム
電気の良導体、鉄よりも電気をよく通す
還元性・水溶液はアルカリ性
バリウム
(アルカリ土類金属)
Ba
黄緑水酸化バリウム
水素化バリウム
空気中で表面が酸化し徐々に白くなる
アルカリ金属等の炎色反応・生成物と特記事項

全てのアルカリ金属等が水と反応した場合、ガスとして発生するのは水素

過去問で出た内容を再現してみます。

過去問での出題例

リチウムの炎色反応は黄緑、バリウムの炎色反応は赤で合ってる?

答え:逆。リチウム=赤、バリウム=黄緑

もう一問、過去問から再現してみます。

過去問での出題例

カルシウムは人体の骨に多く含まれるので、電気の不良導体である?

答え:違う。単体のカルシウムは金属であり電気の良導体

おっさん

炎色反応のイメージ付けは表中の色塗りでも何とかなるか。

でぃでぃ

それか、実験動画を見ちゃうのが早いかもですよ?

危険物乙3 アルカリ金属等の貯蔵取扱・消火方法

【乙3 禁水性・自然発火性】
アルカリ金属
アルカリ土類金属
貯蔵取扱
消火方法
危険物乙3 試験に向けた覚え方

危険物 第三類(乙3)物質のアルカリ金属等:カリウム・ナトリウム・リチウム・カルシウム・バリウムの貯蔵取扱・消火方法を見ていきます。

特に反応性が強いカリウム・ナトリウムと他3種類で扱いが少し異なりますが、基本は同じです。

でぃでぃ

カリウム・ナトリウムは反応性が強いから化合物となる種類も多いです。

アルカリ金属等の貯蔵・取扱い

アルカリ金属等の貯蔵方法は「空気と遮断」「反応するものと隔離」が原則です。

適切:アルカリ金属等の貯蔵・取扱
  • 水・湿気を遮断して保管

(カリウム・ナトリウムは)

  • 保護液中に保存※1

(他の3物質は)

  • 不活性ガスの充填

(アルカリ金属等で共通は)

  • 容器は密栓する
  • 日光を避けた冷暗所
不適切:アルカリ金属等の貯蔵・取扱
  • 水分や湿気に触れる
  • 高湿に曝される
  • 空気と接触
  • 酸と接触
  • ハロゲン・アルコールと接触

※1:カリウムとナトリウムは灯油または流動パラフィンを保護液として沈めて保管します。

おっさん

流動パラフィンってのはベビーオイルみたいな「油」の事なんだな。

過去問で出た内容を再現してみます。

過去問での出題例

カリウムを貯蔵するには流動パラフィンに沈め、さらに不活性ガスを注入しても良い?

答え:良い。不活性ガスは必須でないが、「油」に沈めるのはマスト

もう一問、過去問から再現してみます。

過去問での出題例

ナトリウムをエタノール中に貯蔵しても良い?

答え:良くない。反応してナトリウムエトキシドと水素を発生し危ない

でぃでぃ

保護液にアルコールはNG!

でぃでぃ

…乙3では。乙5は水やアルコールに浸すっていう貯蔵方法も出てくるけど…

アルカリ金属等の消火方法と消火剤

アルカリ金属等の消火方法は「水とほとんどの薬品がNG」で「基本的に窒息消火」です。

基本:アルカリ金属等の消火
  • 窒息消火
  • 乾燥砂・膨張真珠岩など※1
  • 粉末消火剤:炭酸水素塩類
  • 水・泡系全て※2
  • 二酸化炭素
  • ハロゲン化物※3
  • 粉末消火剤:リン酸塩類
補足:アルカリ金属等の消火

※1:砂は乾燥したものを使用。湿っていると水分で水素ガスが発生する

※2:金属が水と反応し水素を発生したり有毒な水酸化物を生成する

※3:ハロゲン化物は反応するのでNG

ここでの「砂」による窒息消火は当然のこと「乾燥砂」、黄リンと混同しないよう注意です。

過去問で出た内容を再現してみます。

過去問での出題例

カルシウムやバリウムの消火に二酸化炭素を使うのはOK?

答え:NG。金属が燃える時はCO2から酸素をブン取って燃焼を継続する

もう一問、再現してみます。

過去問での出題例

ナトリウムの消火に乾燥炭酸ナトリウムを使用して良い?

答え:良い。乾いた炭酸水素塩や食塩で窒息消火できる

おっさん

大量の食塩が消火剤として使えるのって教科書にあんま出てこないよな。

でぃでぃ

まあ食塩は消火剤として使う事は想定してないですからね。

危険物乙3 アルカリ金属等の試験対策

このページで出てきた内容から試験対策に使える疑似問題を作ってみました。

問題右端の+ボタンで答えが出てきます。

問1
カリウムについて間違いの数は?
 ①.比重は水より重い
 ②.炎色反応は赤紫を示す
 ③.銀白色の柔らかい固体
 ④.アルコールに沈めて貯蔵
 ⑤.消火には強化液を使用

間違いは3つ、①④⑤でした。

問2
ナトリウムについて正解の数は?
 ①.銀白色の固体で固い
 ②.炎色反応は黄色を示す
 ③.水と反応し塩化水素を発生
 ④.灯油に沈めて貯蔵する
 ⑤.消火で膨張真珠岩を使用した

正しいのは3つ、①③は間違いです。

問3
リチウムについて間違いの数は?
 ①.炎色反応は赤を示す
 ②.比重は水の約半分
 ③.水と反応し水素を発生
 ④.乾燥した冷暗所に保存する
 ⑤.消火方法は大量注水が良い

間違いは1つ、①②③④は正しいです。

問4
カルシウムについて正解の数は?
 ①.銀白色の固体
 ②.炎色反応はオレンジ色を示す
 ③.還元性が強い
 ④.電気を良く通す
 ⑤.消火で強化液を使用した

正しいのは4つ、⑤は間違いです。

問5
バリウムについて間違いの数は?
 ①.炎色反応は黄色を示す
 ②.比重は水の約半分
 ③.水と反応し硫化水素を発生
 ④.乾燥した冷暗所に保存する
 ⑤.消火方法は大量注水が良い

間違いは4つ、①②③⑤は正しいです。

おっさん

どこかでお前さんが言ってたように、乙3は化学入門みたいで楽しいな。

でぃでぃ

でしょー?入門的な事が一つずつ分かっていく過程が楽しいんですよね。

危険物 第三類(乙3)の物質で指定されているアルカリ金属等:カリウム・ナトリウム・リチウム・カルシウム・バリウムについてはここで一区切りです。

でぃでぃ

お疲れさまでした!

危険物 第三類(乙3)ページ一覧
①:第三類の概要
②:黄リン
③:アルカリ金属等 ◀◀ NOW
④:金属化合物(固体)
⑤:有機金属化合物
⑥:その他 政令で定めるもの

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