2025年(令和7年)11月に実施された高圧ガス製造保安責任者試験「乙種機械」の学識科目の過去問(全15問)を、公式に公表された問題・正解答をもとに解説します。
学識は乙種化学と乙種機械で問題が完全に分かれる科目。機械は熱力学・材料力学・流体・ポンプなど機械工学の基礎が主戦場で、令和7年度の計算問題は1問だけ。知識で押し切れる年度でした。
おっさん機械の学識は計算1問だけか。化学は6問だったのにずいぶん差があるな。
でぃでぃそのぶん材料力学や溶接みたいな暗記系の比重が高いんです。式の「形」を覚えていれば解ける問題が多いので、15問いっしょに見ていきましょーか。
乙種機械学識 令和7年度 概要
| 仕様 | 情報 |
|---|---|
| 試験実施日 | 令和7(2025)年11月9日 |
| 科目 | 学識 |
| 問題数 | 15問(多肢選択式) |
| 試験時間 | 120分(13:30〜15:30) |
| 合格基準 | 満点の60%以上(9/15) |
| 実施 | 年1回(11月) |
でぃでぃ合格ラインは各科目60%。学識は15問なので9問でクリアですね。
問01.SI 単位
次のイ、ロ、ハ、ニの記述のうち、SI 単位について正しいものはどれか。
イ
物質量の単位であるモル(mol)は、SI 基本単位の 1 つである。
ロ
エネルギーおよび仕事の単位であるジュール( J )は SI 組立単位であり、SI 基本単位で表すとkg・m2/s2 である。
ハ
SI 接頭語の M はミリと読み、10-3 を示す。
ニ
粘度のポアズ(P)、圧力の Torr、mmHg、atm、熱量の cal は、いずれもSI 単位ではない。
でぃでぃ正解は(4) イ、ロ、ニ。イ・ロ・ニが正しくて、ハが誤りですね。
イ.正しい:SI基本単位は長さm、質量kg、時間s、電流A、熱力学温度K、物質量mol、光度cdの7つで、モル(mol)はその1つである。
ロ.正しい:J=N・m であり、N=kg・m/s² なので、JをSI基本単位で表すと kg・m²/s² となる。エネルギー・仕事・熱量はいずれもこの単位で表される。
ハ.誤り:M(メガ)は10⁶を表す接頭語である。10⁻³を表すのは小文字のm(ミリ)で、大文字と小文字では意味がまったく異なる。
ニ.正しい:粘度のSI単位はPa・s、圧力はPa、熱量はJである。ポアズ(P)、Torr、mmHg、atm、calはいずれも従来単位であり、SI単位ではない。
接頭語の大文字・小文字(M=10⁶、m=10⁻³)の混同を狙う定番の引っかけ。J=kg・m²/s²はN=kg・m/s²から導出できるようにしておく。
問02.理想気体の状態変化(計算)
温度 27 ℃、圧力 6.0 MPa、体積 1.0 m3 の理想気体がある。この気体を、圧力 6.0 MPa 一定の条件で温度を 87 ℃まで加熱したときの体積と、温度 27 ℃ 一定の条件で圧力を p1 としたときの体積が等しくなった。このとき、圧力 p1 はおよそいくらか。
でぃでぃ正解は(3) 5.0 MPa。
①温度を絶対温度に直す:T₁=27+273=300 K、T₂=87+273=360 K
②等圧変化(シャルルの法則 V∝T)で87℃まで加熱したときの体積:V₂=1.0×360/300=1.2 m³
③等温変化(ボイルの法則 pV=一定)で体積が同じ1.2 m³になる圧力p₁:p₁×1.2=6.0×1.0
④p₁=6.0×1.0/1.2=5.0 MPa
よって p₁≒5.0 MPa → 正解(3)
温度は必ず絶対温度(+273)に直す。300 K→360 Kの比1.2倍がそのまま体積比になり、あとはボイルの法則で割り戻すだけ。
おっさんまた温度をそのまま比にしそうになったぞ。27℃と87℃だから3倍……じゃないんだな。
でぃでぃ300 Kと360 Kで1.2倍、です。学識の計算はまず「℃をKに直す」から。丙種でも乙種でも毎年この変換が狙われていますよ。
問03.熱と仕事
次のイ、ロ、ハ、ニの記述のうち、熱と仕事について正しいものはどれか。
イ
温度 30 ℃ の理想気体 2.0 kg に、圧力 2.0 MPa 一定の条件で 100 k J の熱量を加えると、温度が 80 ℃ に上昇する。ただし、定圧比熱容量は 1.0 k J/(kg・K)で一定とする。
ロ
理想気体のエンタルピーは、内部エネルギー、圧力、体積を用いて表すことができるので状態量であり、温度には依存しない。
ハ
100 ℃ の物体と 0 ℃ の物体が接触して等しい温度になる過程は、不可逆過程である。
ニ
熱力学の第二法則によれば、熱機関に加えられた熱エネルギーをすべて仕事に変換することはできない。
でぃでぃ正解は(5) イ、ハ、ニ。イ・ハ・ニが正しくて、ロが誤りですね。
イ.正しい:Q=mc_pΔT より ΔT=100/(2.0×1.0)=50 K。30℃から50 K上昇して80℃となり、記述のとおりである。
ロ.誤り:エンタルピーH=U+pVが状態量であることは正しいが、理想気体では内部エネルギーもpV(=nRT)も温度のみの関数なので、エンタルピーは温度に依存する(温度だけで決まる)。
ハ.正しい:温度差のある物体間の熱移動は高温側から低温側へ一方向にのみ起こり、外部に変化を残さず元の状態に戻すことはできないため、不可逆過程である。
ニ.正しい:熱力学第二法則(トムソンの原理)により、受け取った熱をすべて仕事に変換し続ける熱機関(第二種永久機関)は実現不可能で、熱効率100%はあり得ない。
ロは「状態量である」の前半が正しいだけに油断しやすい。理想気体のエンタルピーは温度のみの関数、と正確に押さえる。
問04.理想気体の状態変化
次のイ、ロ、ハ、ニの記述のうち、理想気体の状態変化について正しいものはどれか。
イ
圧力一定で気体を加熱して温度を上昇させるとき、加熱に要する熱量と気体のエンタルピー増加量は等しい。
ロ
等温変化では、気体の内部エネルギーは変化せず、気体を加熱しても気体は外部に対して仕事をしない。
ハ
ある気体に一定の熱量を加えるとき、定圧変化よりも定容変化のほうが温度の上昇は大きい。
ニ
比熱容量の比(比熱比) 1.4 の気体が可逆断熱圧縮によって体積 3 m3 から 1 m3 へ変化するとき、圧力は 31.4 倍になる。
でぃでぃ正解は(5) イ、ハ、ニ。イ・ハ・ニが正しくて、ロが誤りですね。
イ.正しい:定圧変化では第一法則より Q=ΔU+pΔV となり、これはエンタルピー変化ΔH=ΔU+Δ(pV)に等しい。加熱量とエンタルピー増加量は一致する。
ロ.誤り:等温変化で内部エネルギーが変化しないのは正しいが、加えた熱量はすべて外部への膨張仕事に変わる(Q=W)。「外部に対して仕事をしない」が誤り。
ハ.正しい:定容変化では体積が変わらず外部に仕事をしないため、熱がすべて内部エネルギー(温度上昇)に使われる。c_v<c_p なので、同じ熱量なら定容のほうが温度上昇は大きい。
ニ.正しい:可逆断熱変化では pVᵞ=一定が成り立つ。p₂/p₁=(V₁/V₂)^1.4=3¹·⁴≒4.7 となり、圧力は3¹·⁴倍(約4.7倍)になる。
定圧ならQ=ΔH、定容ならQ=ΔU、断熱ならpVᵞ=一定。この3つの対応だけで状態変化の正誤問題はほぼ判定できる。
問05.燃焼・爆発
次のイ、ロ、ハ、ニの記述のうち、燃焼・爆発について正しいものはどれか。
イ
水素と空気を体積比 2:1 で混合したガスの組成は化学量論組成であり、この混合比付近のときが最も激しい爆発を起こす。
ロ
燃焼は酸化反応であり、ガスの燃焼において可燃性ガスは還元性のガスであり、支燃性ガスは酸化性のガスである。
ハ
1 mol のエタンを完全燃焼させるには、理論上 2 mol の酸素が必要となる。
ニ
可燃性混合ガスの燃焼速度は、火炎面が未燃混合ガスに対して面に垂直に進む速度を表し、可燃性混合ガス中の各成分の割合によらない。
でぃでぃ正解は(1) ロ。ロが正しくて、イ・ハ・ニが誤りですね。
イ.誤り:水素と「酸素」が2:1なら化学量論組成だが、相手は空気(酸素約21%)なので量論組成は水素:空気≒2:4.8(水素約30%)となる。空気との2:1混合は量論組成ではない。
ロ.正しい:燃焼は可燃性ガス(燃料)が酸化される酸化反応であり、可燃性ガスは還元性のガス、酸素・空気・塩素などの支燃性ガスは酸化性のガスである。
ハ.誤り:エタンの完全燃焼は C₂H₆+3.5O₂→2CO₂+3H₂O であり、1 molのエタンに理論上必要な酸素は3.5 molである。2 molではない。
ニ.誤り:燃焼速度が火炎面が未燃混合ガスに対し垂直に進む速度であることは正しいが、その値は混合ガスの組成に大きく依存し、化学量論組成付近で最大となる。
「酸素」を「空気」にすり替えるのが最頻出の引っかけ。量論比はまず酸素基準で立式し、空気なら0.21で割って換算する。
問06.流体の流れ
次のイ、ロ、ハ、ニの記述のうち、流体の流れについて正しいものはどれか。
イ
円管内を流れる流体の流れの状態の判別に用いられるレイノルズ数は、管の内径、平均流速、流体の密度、流体の粘度から算出できる。
ロ
管内の流れが乱流のとき、摩擦損失は管内壁の粗さの影響を受ける。
ハ
円管内の定常流れが乱流である場合、管断面の平均流速は最大流速の 1/2 となる。
ニ
定常流れが乱流のときの円管内の圧力損失は、ファニングの式で表すことができ、平均流速の 2 乗に比例する。
でぃでぃ正解は(4) イ、ロ、ニ。イ・ロ・ニが正しくて、ハが誤りですね。
イ.正しい:レイノルズ数は Re=ρuD/μ(流体の密度×平均流速×管内径÷流体の粘度)で算出され、層流・乱流の判別(臨界Re≒2100〜2300)に用いられる。
ロ.正しい:乱流域の管摩擦係数はレイノルズ数に加えて管内壁の相対粗さの影響を受ける。なお層流では粗さの影響を受けず、Reのみで決まる。
ハ.誤り:平均流速が最大流速(管中心の流速)の1/2になるのは層流の場合である。乱流では速度分布が平坦になり、平均流速は最大流速の約0.8倍程度となる。
ニ.正しい:円管内の圧力損失はファニングの式 Δp=4f(L/D)(ρu²/2) で表され、平均流速uの2乗に比例する。
「平均流速は最大流速の1/2」は層流の性質。乱流は約0.8倍。層流=粗さ無関係、乱流=粗さの影響あり、も対で覚える。
問07.伝熱および分離
次のイ、ロ、ハ、ニの記述のうち、伝熱および分離について正しいものはどれか。
イ
放射伝熱における全熱放射エネルギーは、物体表面の絶対温度の 4 乗に比例する。
ロ
定常状態にある熱交換器の総括伝熱係数(熱貫流率)は、伝熱速度、伝熱面積、低温および高温流体の温度を測定すれば求められる。
ハ
反応を伴わずガスの物理的な溶解度の差を利用して行うガス吸収プロセスでは、操作温度を上げることによって、溶質ガスの吸収速度を大きくすることができる。
ニ
理想溶液の液体混合物を蒸留によって高沸点物質と低沸点物質とに分離する場合、平衡状態にある液体混合物中の物質の蒸気圧と液組成の間にはラウールの法則が成り立つ。
でぃでぃ正解は(4) イ、ロ、ニ。イ・ロ・ニが正しくて、ハが誤りですね。
イ.正しい:ステファン・ボルツマンの法則により、物体表面から放射される全熱放射エネルギーは表面の絶対温度Tの4乗に比例する(E=εσT⁴)。
ロ.正しい:総括伝熱係数Uは Q=UAΔT_m で定義される。伝熱速度Q、伝熱面積A、高温・低温流体の温度(から求まる平均温度差ΔT_m)を測定すれば、U=Q/(AΔT_m)として算出できる。
ハ.誤り:気体の溶解度は温度が上がるほど小さくなるため、物理吸収では操作温度を上げると吸収の推進力が低下し不利になる。吸収を促進するには低温・高圧で操作する。
ニ.正しい:理想溶液では、平衡状態にある各成分の蒸気分圧=純成分の蒸気圧×液中モル分率というラウールの法則が成り立ち、蒸留計算の基礎となる。
物理吸収は「低温・高圧」が有利。気体の溶解度は温度上昇で低下するという性質を逆に書いてくる引っかけが定番。
問08.変形と破壊
次のイ、ロ、ハ、ニの記述のうち、変形と破壊について正しいものはどれか。
イ
一般的に部材棒の両端を固定した状態で温度を上昇させると引張応力、温度を低下させると圧縮応力が生じ、これらを熱応力という。
ロ
材料の基本的な疲労特性を表す S – N 曲線において、繰返し数が大きくなると現れる水平部の応力振幅を疲労限度というが、材料によっては疲労限度が現れないこともある。
ハ
縦弾性係数(ヤング率)は、引張試験を行って得られる応力 – ひずみ線図において、応力が比例限度以下である範囲の傾きとして与えられる。
ニ
丸棒を引っ張ったとき、引張方向に垂直な方向の縮みを変形前の直径で割って得られる変形の割合がせん断ひずみである。
でぃでぃ正解は(3) ロ、ハ。ロ・ハが正しくて、イ・ニが誤りですね。
イ.誤り:両端固定の棒では、温度上昇時は伸びが拘束されるため圧縮応力、温度低下時は縮みが拘束されるため引張応力が生じる。記述は引張と圧縮が逆である。
ロ.正しい:S-N曲線で繰返し数が大きい側に現れる水平部の応力振幅が疲労限度である。ただしアルミニウム合金などの非鉄金属では、明確な疲労限度が現れないことがある。
ハ.正しい:応力-ひずみ線図の比例限度以下ではフックの法則 σ=Eε が成り立ち、その直線部分の傾きが縦弾性係数(ヤング率)Eとして与えられる。
ニ.誤り:引張方向に垂直な方向の縮みを変形前の直径で割ったものは横ひずみである。せん断ひずみはせん断力による角度変化(ずれ)を表す量で、まったく別のものである。
熱応力は「温度上昇→圧縮、低下→引張」と直感の逆。伸びようとして押さえ込まれるから圧縮、とイメージで覚える。
おっさん温度が上がると圧縮応力なのか。熱くなったら引っ張られそうな気がするけどな。
でぃでぃ伸びようとするのを押さえ込まれるから圧縮、なんです。直感と逆なので、理屈のほうで覚えてしまいましょーか。
問09.内径と肉厚がそれぞれ同じである両端閉じ薄肉円筒胴と薄肉球形胴に同じ大きさの内圧が作用した場合
次のイ、ロ、ハ、ニの記述のうち、内径と肉厚がそれぞれ同じである両端閉じ薄肉円筒胴と薄肉球形胴に同じ大きさの内圧が作用した場合について正しいものはどれか。
イ
薄肉円筒胴の円周応力と軸応力、薄肉球形胴の円周応力は、いずれも厚さ方向に一様に分布すると考えてよい。
ロ
薄肉円筒胴の半径応力と薄肉球形胴の半径応力は、いずれも円周応力に比べて十分小さい。
ハ
薄肉円筒胴の円周応力と薄肉球形胴の円周応力は等しい。
ニ
薄肉円筒胴の円周応力は、軸応力の 2 倍の大きさである。
でぃでぃ正解は(5) イ、ロ、ニ。イ・ロ・ニが正しくて、ハが誤りですね。
イ.正しい:薄肉容器では肉厚が内径に比べて十分小さいため、円筒胴の円周応力・軸応力も球形胴の円周応力も、厚さ方向に一様に分布すると近似してよい。これが薄肉理論の基本仮定である。
ロ.正しい:半径応力は大きくても内圧p程度なのに対し、円周応力は pD/(2t)(球形は pD/(4t))で D/t≫1 のためはるかに大きい。よって半径応力は円周応力に比べ十分小さく無視できる。
ハ.誤り:円筒胴の円周応力は pD/(2t)、球形胴の円周応力は pD/(4t)。同じ内径・肉厚・内圧なら球形胴の応力は円筒胴の1/2であり、等しくない。
ニ.正しい:円筒胴の円周応力は pD/(2t)、軸応力は pD/(4t) であり、円周応力は軸応力のちょうど2倍である。円筒が軸方向に裂けやすいのはこのためである。
pD/(4t)を基準に「円筒の周:円筒の軸:球=2:1:1」の比で丸暗記できる。球形胴が応力的に最も有利な形である理由でもある。
おっさん円筒の周方向・軸方向・球で2:1:1か。球のタンクが多い理由はこれなんだな。
でぃでぃそのとおりです。同じ内圧・同じ肉厚なら球形胴がいちばん応力が小さい。式の比で覚えると絶対に忘れませんよ。
問10.材料の腐食、劣化
次のイ、ロ、ハ、ニの記述のうち、材料の腐食、劣化について正しいものはどれか。
イ
引張応力を受けるオーステナイト系ステンレス鋼が高温塩化物環境にさらされると、応力腐食割れを生じることがある。
ロ
高温高圧の水素が鋼中に侵入して炭化物と反応し、発生したメタンガスが結晶粒界に蓄積し、鋼の強度が低下する現象が水素侵食である。
ハ
炭素鋼は、常温の濃硫酸の環境で不動態皮膜が溶解し、激しく腐食する。
ニ
オーステナイト系ステンレス鋼の粒界腐食を抑制するためには、粒界での炭化クロムの生成を促すように炭素の添加量を増やすことが有効である。
でぃでぃ正解は(3) イ、ロ。イ・ロが正しくて、ハ・ニが誤りですね。
イ.正しい:オーステナイト系ステンレス鋼は、引張応力・高温・塩化物環境の3条件がそろうと応力腐食割れ(SCC)を起こしやすい代表的な材料である。
ロ.正しい:高温高圧の水素が鋼中に侵入して炭化物(セメンタイト)と反応しメタンを生成、これが結晶粒界に蓄積して脱炭・亀裂を進行させ強度を低下させる現象が水素侵食である。
ハ.誤り:炭素鋼は常温の濃硫酸中では表面に保護性の皮膜が生成し、腐食は抑えられる。激しく腐食するのは希硫酸の場合であり、記述は濃・希が逆である。
ニ.誤り:粒界腐食は粒界にクロム炭化物が析出しCr欠乏層ができるのが原因。対策は炭素量を減らす(304L等の低炭素鋼)かTi・Nbの添加であり、炭素の増量は逆効果である。
粒界腐食対策は「低炭素化」が鉄則。炭素を増やす・炭化クロムの生成を促す、と書かれたら誤りと即断してよい。
問11.溶接
次のイ、ロ、ハ、ニの記述のうち、溶接について正しいものはどれか。
イ
溶接部の余盛部と母材との境界部に生じる疲労割れや、オーステナイト系ステンレス鋼の熱影響部に生じる応力腐食割れは、設備使用中に発生する溶接部の割れの例である。
ロ
高張力鋼の溶接では、溶接後にある時間経過してから高温割れが生じやすい。
ハ
サブマージアーク溶接では、あらかじめ散布されたフラックスの中で、ワイヤ先端と母材との間にアークを発生させる。
ニ
アルミニウム合金の溶接で最後に凝固する部分に発生するクレータ割れは、溶接残留応力が高くなって発生する低温割れである。
でぃでぃ正解は(1) イ、ハ。イ・ハが正しくて、ロ・ニが誤りですね。
イ.正しい:余盛と母材の境界部(止端部)は応力集中により疲労割れの起点となりやすく、オーステナイト系ステンレス鋼の熱影響部は鋭敏化により応力腐食割れを生じることがある。いずれも使用中に発生する割れである。
ロ.誤り:高張力鋼で溶接後ある時間経過してから生じるのは、拡散性水素が原因の低温割れ(遅れ割れ)である。高温割れは凝固直後の高温域で発生するもので、時間をおいて生じる割れではない。
ハ.正しい:サブマージアーク溶接は、母材上にあらかじめ散布した粒状フラックスの中でワイヤ先端と母材の間にアークを発生させる溶接法で、アークは外部から見えない。
ニ.誤り:クレータ割れはビード終端のクレータ部が凝固する際に生じる高温割れ(凝固割れ)の一種である。残留応力による低温割れではない。
「時間が経ってから出る割れ=水素による低温割れ(遅れ割れ)」「凝固時に出る割れ=高温割れ」。この対応を入れ替えるのが定番の出題。
問12.高圧装置
次のイ、ロ、ハ、ニの記述のうち、高圧装置について正しいものはどれか。
イ
充塡塔内部に置かれる充塡物は、液と蒸気の気液接触が十分に行われるように、表面積が大きいものが選択される。
ロ
熱交換器の設計にあたっては、あらかじめ汚れの程度を仮定し、この汚れによる総括伝熱係数の低下を見込んで伝熱面積が決められる。
ハ
プレート式熱交換器では、プレート上の波形が流路を形成するとともに、流体に渦流を起こして伝熱を促進したり、伝熱面積を増すなどの役目を果たしており、同じ伝熱量の多管円筒形熱交換器に比べて小型化が図れる。
ニ
玉形弁は、同一口径のボール弁、バタフライ弁よりも全開時の圧力損失が小さい。
でぃでぃ正解は(4) イ、ロ、ハ。イ・ロ・ハが正しくて、ニが誤りですね。
イ.正しい:充塡塔の充塡物(ラシヒリング、ポールリングなど)は気液の接触面積を大きくして物質移動を促進するため、単位体積当たりの表面積が大きい形状のものが選ばれる。
ロ.正しい:運転中の伝熱面には汚れが付着して総括伝熱係数が低下するため、設計ではあらかじめ汚れ係数を仮定し、その低下分を見込んで伝熱面積に余裕を持たせて決定する。
ハ.正しい:プレート式熱交換器は波形プレートが流路を形成し、渦流による伝熱促進と伝熱面積の増大が図れるため、同じ伝熱量なら多管円筒形(シェルアンドチューブ)より小型化できる。
ニ.誤り:玉形弁は流路がS字状に曲がるため、全開時の圧力損失は流路がほぼ直線となるボール弁やバタフライ弁よりも大きい。流量調節性に優れる反面、圧損では不利である。
全開時の圧力損失は「ボール弁・仕切弁<バタフライ弁<玉形弁」。玉形弁は調節性と引き換えに圧損大、とセットで覚える。
問13.計測機器
次のイ、ロ、ハ、ニの記述のうち、計測機器について正しいものはどれか。
イ
差圧式液面計は、高圧側圧力と低圧側圧力との差圧と液の密度を利用して、液面の高さを求めるものである。
ロ
容積式流量計は、回転翼の回転速度(単位時間当たりの回転数)を電気信号として取り出して、流量を測定するものである。
ハ
ガスクロマトグラフは、気体の熱伝導度が気体により異なることを利用してガスを分離し、その後でガス濃度を測定するものである。
ニ
抵抗温度計は、金属線の電気抵抗値と温度との間に一定の関係があることを利用して温度を測定するものであり、測温抵抗体として白金がよく使われる。
でぃでぃ正解は(2) イ、ニ。イ・ニが正しくて、ロ・ハが誤りですね。
イ.正しい:差圧式液面計は、タンク底部(高圧側)と気相部(低圧側)の圧力差 Δp=ρgh を検出し、液の密度ρを用いて液面高さ h=Δp/(ρg) を求めるものである。
ロ.誤り:回転翼の回転速度から流量を求めるのはタービン式流量計の原理である。容積式流量計は、一定容積の計量室に流体を満たしては送り出し、その繰返し回数から流量を積算する方式である。
ハ.誤り:ガスクロマトグラフの分離は、カラム内の固定相への吸着・分配のされやすさが成分ごとに異なることを利用する。熱伝導度の差は分離後の検出(TCD検出器)に使われるもので、分離の原理ではない。
ニ.正しい:抵抗温度計は金属線の電気抵抗が温度と一定の関係で変化することを利用した温度計で、測温抵抗体には特性が安定で精度の高い白金(Pt100など)が広く使われる。
ガスクロは「分離=カラムの吸着・分配、検出=熱伝導度など」と役割が別。分離原理に検出原理をすり替える引っかけに注意。
問14.ポンプ
次のイ、ロ、ハ、ニの記述のうち、ポンプについて正しいものはどれか。
イ
水撃作用(ウォータハンマ)の防止法には、吐出し配管路にサージタンクまたは空気室を設け圧力上昇、圧力低下を緩和させる方法がある。
ロ
利用しうる NPSH よりも、必要 NPSH が大きい場合、キャビテーションが生じない。
ハ
往復ポンプで圧送する液に発生する脈動は、シリンダ数が増えると大きくなる。
ニ
往復ポンプの軸動力は、揚程とポンプ効率に変化が無ければ回転速度(単位時間当たりの回転数)に比例する。
でぃでぃ正解は(2) イ、ニ。イ・ニが正しくて、ロ・ハが誤りですね。
イ.正しい:ウォータハンマは弁の急閉止などによる管内流速の急変で圧力が急激に変動する現象で、吐出し配管路にサージタンクや空気室を設けて圧力上昇・低下を緩和する方法は有効な防止策である。
ロ.誤り:キャビテーションが生じない条件は「利用しうるNPSH(有効NPSH)>必要NPSH」である。必要NPSHのほうが大きい場合は吸込み部で液が飽和蒸気圧を下回り、キャビテーションが発生する。
ハ.誤り:往復ポンプの脈動はピストンの往復運動に伴う流量変動が原因であり、シリンダ数を増やして多連化すると吐出しが平準化され、脈動はむしろ小さくなる。
ニ.正しい:往復ポンプの吐出し量は回転速度に比例する。軸動力は P=ρgQH/η なので、揚程Hとポンプ効率ηが一定なら、軸動力は吐出し量すなわち回転速度に比例する。
NPSHは「利用しうる(設備側)>必要(ポンプ側)」なら安全。この不等号の向きを逆にして問うのが最頻出パターン。
問15.流体の漏えいとその防止
次のイ、ロ、ハ、ニの記述のうち、流体の漏えいとその防止について正しいものはどれか。
イ
オイルフィルムシールは、はめ込まれたリング間にガス圧よりわずかに高い圧力の油を供給し、油膜を形成させ、ガスがすき間から外部に漏れるのを防ぐ構造である。
ロ
ピンホールなどから気体または液体が少量漏えいする場合、漏えい量はピンホールの内径の 4 乗に比例し、また圧力差および粘度に比例し、ピンホールの長さに反比例する。
ハ
フランジ面にガスケットを挿入しボルトで締め付けたとき、内圧が加わっていない状態では、ガスケットが受ける圧縮荷重とボルトの引張荷重の大きさは同じである。
ニ
メカニカルシールのしゅう動面は、摩耗することを前提としており、一方がカーボン、他方がステンレス、超硬合金、セラミックスなどが使用されている。
でぃでぃ正解は(5) イ、ハ、ニ。イ・ハ・ニが正しくて、ロが誤りですね。
イ.正しい:オイルフィルムシールは、はめ込まれたリングと軸のすき間にガス圧よりわずかに高い圧力の封油を供給して油膜を形成させ、ガスが外部へ漏れるのを防ぐ非接触式の軸封装置である。
ロ.誤り:ピンホールからの漏えい量はハーゲン・ポアズイユの式 Q=πd⁴Δp/(128μL) に従う。内径の4乗と圧力差に比例し長さに反比例するのは正しいが、粘度には比例ではなく反比例する。
ハ.正しい:内圧が加わっていない締付け状態では、力のつり合いにより、ボルトの引張荷重の合計とガスケットが受ける圧縮荷重は大きさが等しい。内圧が加わるとガスケット荷重は減少する。
ニ.正しい:メカニカルシールのしゅう動面は摩耗を前提とした摺動対であり、一方に自己潤滑性のあるカーボン、相手側に耐摩耗性の高いステンレス鋼・超硬合金・セラミックスなどが用いられる。
漏えい量は「d⁴・Δpに比例、粘度・長さに反比例」。列挙の中に「粘度に比例」をさらりと紛れ込ませる誤りが狙い目。
まとめ:令和7年度 学識の傾向
令和7年度の乙種機械・学識は、SI単位と熱力学(問1〜4)、燃焼・爆発(問5)、流体と伝熱(問6〜7)、材料力学・材料・溶接(問8〜11)、高圧装置・計測・ポンプ・シール(問12〜15)という構成。式の形(σ=PD/2t、NPSHの不等号、d⁴則)を問う問題が目立ちました。
「層流と乱流の性質の入れ替え」「分離原理と検出原理のすり替え」「不等号の向きの反転」が引っかけの3大パターン。式と序列を一言で言えるようにしておくのが近道です。
おっさん圧損の序列とか応力の比とか、覚えることは多いが計算はほとんどないんだな。
でぃでぃはい。乙種機械の学識は「式を使う」より「式を知ってるか」の試験です。過去問の式を一覧にして眺めるだけでもだいぶ違いますよ。
よくある質問
乙種機械の学識は乙種化学とどのくらい違いますか?
学識は完全に別問題です。機械は熱力学・材料力学・流体機械・溶接が中心で、化学のような化学反応・化学平衡はほぼ出ません。
計算問題はどのくらい出ますか?
令和7年度は15問中1問(理想気体の状態変化)だけでした。ただし記述の中に断熱圧縮の圧力比のような小計算が混ざるので、pVᵞ=一定などの基本式は使える状態にしておくと安心です。
過去問はどこまで公表されていますか?
高圧ガス保安協会(KHK)が国家試験の問題と択一式の正解答を公表しています。本ページは令和7年度(2025年11月実施)の公表内容にもとづいています。
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