危険物 第五類(乙5)の物質で指定されている有機過酸化物:過酸化ベンゾイル・メチルエチルケトンパーオキサイド・過酢酸の性状・取扱い・消火に関するページです。
- 過酸化ベンゾイル
- メチルエチルケトンパーオキサイド
- 過酢酸
乙1で無機過酸化物ってあったよね。
です。
こっちは分子中に炭素(C)を含むので有機物ですね。
実は身近なものとかある?
そうですね…。
過酸化ベンゾイルはニキビ肌の薬に含まれてるとか…?
やっぱ薬になるのもあるんだな。片や薬、片や軍用とか忙しすぎだろ乙5よ…
危険物で一番難しいと言われるのが乙5ですから…
危険物 第五類(乙5) 有機過酸化物の基本情報
このページの本編に入る前に物質の基本情報を確認します。
- 自己反応性の物質
- 貯蔵方法はモノによる※1
- 打撃・衝撃・摩擦で爆発
- 消火は基本的に水系
※1:直射日光は避ける
メチルエチルケトンパーオキサイドは、メチルエチルケトンと過酸化水素が反応したものの総称。メチルエチルケトンペルオキシドとも呼ばれるが、いわゆる「表記のゆれ」であり同じ意味合い。
油状の液体で貯蔵時は「フタに孔のあるもの」を使用するのが特徴。容器の内圧が上がると自己分解を促進し爆発に至る。
市販品は危険性を落とすために「フタル酸ジメチルで薄めて」55-60%くらいの濃度としている。
1964年に東京都内の倉庫でメチルエチルケトンパーオキサイドの爆発事故が発生した。
【用途】
ニキビの薬・漂白剤
【関連物質】
乙6:過酸化水素
過酢酸は、酢酸と過酸化水素に硫酸の触媒作用があって生成される。
過酢酸は不安定な物質なので危険性を落とすために濃度は上限40%と定められている。
2017年に広島の工場で過酢酸が関連する火災事故が発生した。
【用途】
炭疽菌の消毒薬・医療器具の滅菌
【関連物質】
乙6:過酸化水素
やっぱ危険物だから何かしらの事故が起きてるもんだな…
事故について見るのも勉強として大事…!
危険物 第五類(乙5) 有機過酸化物の性状① 状態・数値
危険物 第五類(乙5)物質の有機過酸化物:過酸化ベンゾイル・メチルエチルケトンパーオキサイド・過酢酸の性状から、状態と毒性を見ていきます。
表中、項目を黄色く塗ったところと赤字は試験対策に直結する大事なポイントです。
物質名 | 色 | 状態 | 性質 | 毒性等 | 比重 | 融点 | 引火点 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
(C6H5CO)2O2 | 過酸化ベンゾイル白 | 固体 | 酸化性 | 皮膚炎 等 | 1.30 | 103℃ | (発火) 80℃ |
メチルエチルケトンパーオキサイド 60%液 (CH3COC2H5)2OO | 透明 | 油状 液体 | - | - | 1.10 | - | 75℃ |
CH3COOOH | 過酢酸 40%液透明 | 液体 | 酸化性 | 腐食性 刺激臭 | 1.20 | - | 41℃ |
~%液ってのは濃度の上限値が定められているんだな。
性状② 溶解性・反応性
過酸化ベンゾイル・メチルエチルケトンパーオキサイド・過酢酸の性状から、溶解性と反応性を見ていきます。
物質名 | (溶解) 水 | (溶解) Alc | (溶解) 溶媒 | (反応) 酸 | (反応) アルカリ | (反応) 金属 |
---|---|---|---|---|---|---|
(C6H5CO)2O2 | 過酸化ベンゾイルする | する | ||||
メチルエチルケトンパーオキサイド 60%液 (CH3COC2H5)2OO | ||||||
CH3COOOH | 過酢酸 40%液する | する | する |
酸やアルカリと反応すると爆発的に分解します。
性状③ 危険性・生成物・特記事項
過酸化ベンゾイル・メチルエチルケトンパーオキサイド・過酢酸の性状から、危険性・生成物・特記事項を見ていきます。
物質名 | 危険性 | 生成物 | 特記事項 |
---|---|---|---|
(C6H5CO)2O2 | 過酸化ベンゾイル爆発 粉じん爆発 | - | 光で分解する |
メチルエチルケトンパーオキサイド 60%液 (CH3COC2H5)2OO | 引火 爆発 自然分解 | 腐食性ガス | 水とは反応しない フタル酸ジメチルで希釈 布・酸化鉄・金属との接触NG |
CH3COOOH | 過酢酸 40%液引火 爆発 粘膜刺激 | - | 乙4の氷酢酸とよく似ている 110℃で爆発 |
液体だろうと何だろうとみんな爆発するな…だから乙5なんだよな…
危険物 第五類(乙5) 有機過酸化物の貯蔵・取扱方法
危険物 第五類(乙5)物質の過酸化ベンゾイル・メチルエチルケトンパーオキサイド・過酢酸の貯蔵・取扱方法を見ていきます。
同じ有機過酸化物でも貯蔵方法がそれぞれ異なるのがポイントです。
- 水で湿潤にしておく
- 容器を密栓
- 冷暗所に貯蔵
- 乾いて温度が上がる
- 日光が当たる
- 加熱・衝撃・摩擦
- 蓋に通気孔のある容器
- 金属・酸化鉄・布と隔離
- 冷暗所に貯蔵
- 容器を密栓
- 日光が当たる
- 加熱・衝撃・摩擦
- 容器を密栓
- 酸化剤・可燃物・金属と隔離
- 換気の良い冷暗所
- 火気厳禁
- 日光が当たる
- 加熱・衝撃・摩擦
三者三様、こりゃ地道に理解しながら覚えるしかないな。
危険物 第五類(乙5) 有機過酸化物の消火方法
危険物 第五類(乙5)物質の過酸化ベンゾイル・メチルエチルケトンパーオキサイド・過酢酸の消火方法を見ていきます。
消火方法はいずれも共通です。
- 水・泡による冷却消火
- 乾燥砂
- 膨張真珠岩・膨張ひる石
- 粉末消火剤
- 二酸化炭素
- ハロゲン化物
乙5は粉末消火剤がNGですよー
危険物 第五類(乙5) 有機過酸化物の試験対策
このページで出てきた内容から試験対策に使える疑似問題を作ってみました。
問題右端の+ボタンで答えが出てきます。
問1:過酸化ベンゾイルについて誤りの数は?
①.白色の固体である
②.日光で分解する
③.引火性がある
④.乾燥状態で貯蔵する
⑤.粉末消火剤での消火が適切
間違いは2つ、①②③は正しいです。
問2:メチルエチルケトンパーオキサイドについて正解の数は?
①.透明な油状液体である
②.比重は水より小さい
③.フタル酸ジメチルで希釈する
④.布や酸化鉄と接触しても問題ない
⑤.蓋に通気孔のある容器に保存
正しいのは3つ、②④は間違いです。
問3:過酢酸について誤りの数は?
①.黄緑色の気体である
②.引火性と爆発性がある
③.液体なので衝撃に強い
④.密栓し換気の良い冷暗所に貯蔵
⑤.水・泡系での冷却消火が適切
間違いは2つ、②④⑤は正しいです。
危険物 第五類(乙5)の物質で指定されている有機化合物:過酸化ベンゾイル・メチルエチルケトンパーオキサイド・過酢酸についてはここで一区切りです。
お疲れさまでした!
■危険物 第五類(乙5)ページ一覧
①:第五類の概要
②:有機過酸化物 ◀NOW
③:硝酸エステル類
④:ニトロ・ニトロソ化合物
⑤:アゾ・ジアゾ化合物
⑥:ヒドラジン・アミン
⑦:その他 政令で定めるもの