危険物 第五類(乙5)の物質で指定されている硝酸エステル類:硝酸メチル・硝酸エチル・ニトログリセリン・ニトロセルロース・セルロイドの性状・取扱い・消火に関するページです。
- 硝酸メチル
- 硝酸エチル
- ニトログリセリン
- ニトロセルロース
- セルロイド
ニトログリセリンとか明らかにヤベーやつが入ってんな…
ニトログリセリンはダイナマイトの材料でもあるんで貯蔵は火薬庫で厳重に保管です。
…ナニソレコワイ…
割と最近、2022年3月に九州で工場が吹き飛んだ事故がありましたね。
延岡のアレだよな。写真見たけどエグいなアレ…
危険物 第五類(乙5) 硝酸エステル類の基本情報
このページの本編に入る前に物質の基本情報を確認します。
硝酸エステル類は性状・貯蔵・消火ともモノによって違いすぎるので、似たようなものを纏めて「カタにはめて覚える」のが困難です。
乙5は全体的にそんな感じですが…
物質ごとの解説でざっくりしたイメージを掴んで、後から出てくる表で根気よく覚えるのが現実的かもです。
ニトログリセリンは、グリセリンと硝酸をエステル化させたもので、爆薬~薬と使途が広い。
油状の液体であり、甘味と毒性がある。
貯蔵は「火薬庫」で保存し、8℃前後で凍結し危険性が増すので温度管理も重要となる。
反応は爆轟を起こすほど激しいので「消火困難」という扱い。
【用途】
爆薬・狭心症の薬
【関連物質】
乙6:硝酸
硝酸メチル・硝酸エチル・ニトログリセリンを「液体で消火困難」くらいで括ってみるのもアリかもな。
この後の2つは固体です。
ニトロセルロースは、セルロース(不溶性の食物繊維)を硝酸と硫酸の混液でエステル化させたもので、硝化綿などとも呼ばれる。
綿状の固体であり、危険性は窒素含有率(=硝化度)が高いほど増す。
貯蔵は自然分解を防ぐために「水やアルコールで湿潤に」しておく。
消火は乙5では珍しく水・泡・砂の定番パターンが有効。
【用途】
インク・塗料・ネイル用ニス
【関連物質】
乙6:硝酸
セルロイドは、ニトロセルロースに樟脳(しょうのう、樹脂のようなもの)を混ぜて作る合成樹脂。
昔は映画フィルムなどに使われていたが、基本的に燃えやすく自然発火もする。
また、劣化品・粗製品は「より低い温度で発火」する事もあるので、貯蔵・取扱いに注意を要す。
消火方法は「大量注水」が推奨されている。
【用途】
メガネのフレーム
同じ硝酸エステル類でこうも扱いが違うと勉強するのに困りものですね…
危険物 第五類(乙5) 硝酸エステル類の性状① 状態・数値
危険物 第五類(乙5)物質の硝酸メチル・硝酸エチル・ニトログリセリン・ニトロセルロース&セルロイドの性状から、状態と毒性を見ていきます。
表中、項目を黄色く塗ったところと赤字は試験対策に直結する大事なポイントです。
物質名 | 色 | 状態 | 性質 | 毒性等 | 比重 | 引火点 |
---|---|---|---|---|---|---|
CH3NO3 | 硝酸メチル透明 | 液体 | 芳香 甘味 | - | 1.20 | 15℃ |
C2H5NO3 | 硝酸エチル透明 | 液体 | 芳香 甘味 | - | 1.10 | 10℃ |
C3H5(ONO2)3 | ニトログリセリン透明 | 油状 液体 | 甘味 | 有毒 | 1.20 | - |
ニトロセルロース | 白 | 固体 (綿状) | 無味 | - | 1.70 | - |
セルロイド | 半透明 | 固体 | - | - | - | - |
セルロイドはニトロセルロースを使った合成樹脂なのか。
セルロースは試験で数値系の出題は見た事ないですね…。
性状② 溶解性・反応性
硝酸メチル・硝酸エチル・ニトログリセリン・ニトロセルロース&セルロイドの性状から、溶解性と反応性を見ていきます。
物質名 | (溶解) 水 | (溶解) Alc | (溶解) 溶媒 | (反応) 酸 | (反応) アルカリ | (反応) 金属 |
---|---|---|---|---|---|---|
CH3NO3 | 硝酸メチル||||||
C2H5NO3 | 硝酸エチル||||||
C3H5(ONO2)3 | ニトログリセリン||||||
ニトロセルロース | ||||||
セルロイド |
硝酸エステル類は教科書や試験で反応性が出ないのでスルーしますね。
性状③ 危険性・生成物・特記事項
硝酸メチル・硝酸エチル・ニトログリセリン・ニトロセルロース&セルロイドの性状から、危険性・生成物・特記事項を見ていきます。
物質名 | 危険性 | 生成物 | 特記事項 |
---|---|---|---|
CH3NO3 | 硝酸メチル引火 爆発 | 一酸化窒素 | 乙4のアルコールと似た性質・取扱と考える 消火困難:燃焼中に自前で酸素供給 |
C2H5NO3 | 硝酸エチル引火 爆発 | 一酸化窒素 | 同上 |
C3H5(ONO2)3 | ニトログリセリン爆発 | - | 水酸化ナトリウムのアルコール溶液で非爆発性に 8℃で凍結し爆発しやすくなる 消火困難:爆発は止められない |
ニトロセルロース | 爆発 自然発火 | 窒素酸化物 一酸化炭素 | 窒素含有率の高いものほど危険性は高い 乾くと危険性が増す |
セルロイド | 自然発火 | - | 粗製品・劣化品は発火点が下がる 発熱しながら分解→蓄熱→自然発火 |
硝酸メチル・硝酸エチルは硝酸とアルコールが反応して出来たものだからアルコール単体と似てるのか。
危険物 第五類(乙5) 硝酸エステル類の貯蔵・取扱方法
危険物 第五類(乙5)物質の硝酸メチル・硝酸エチル・ニトログリセリン・ニトロセルロース&セルロイドの貯蔵・取扱方法を見ていきます。
同じ硝酸エステル類でも貯蔵方法がそれぞれ異なるのがポイントです。
- 容器を密栓
- 冷暗所に貯蔵
- 日光が当たる
- 加熱・衝撃・摩擦
- 火薬庫に貯蔵
- 加熱・衝撃・摩擦
- 揺らす→爆発
- 水・アルコールで湿潤にしておく
- 容器は密封する
- 日光が当たる
- 加熱・衝撃・摩擦
- 通風が良い冷暗所
- 湿度が低い場所
- 日光が当たる
- 加熱・衝撃・摩擦
乙5物質は全て「日光と加熱・衝撃・摩擦はダメ」って割り切っちゃいましょう。
危険物 第五類(乙5) 硝酸エステル類の消火方法
危険物 第五類(乙5)物質の硝酸メチル・硝酸エチル・ニトログリセリン・ニトロセルロース&セルロイドの消火方法を見ていきます。
硝酸メチル・硝酸エチル・ニトログリセリンは消火困難です。引火・爆発した場合は反応が終わるまで放置するのが現実的です。
また、セルロイドは教科書や過去問で消火方法に触れられていないので表にはしませんが、化学メーカーは大量注水での消火を推奨しているようです。
- 水・泡による冷却消火
- 乾燥砂
- 膨張真珠岩・膨張ひる石
- 粉末消火剤
- 二酸化炭素
- ハロゲン化物
乙5物質の水で消火OKなものの殆どはこれと同じ消火方法と割り切って大丈夫です。
消火困難で割り切れるのは勉強としては整理しやすい…?
危険物 第五類(乙5) 硝酸エステル類の試験対策
このページで出てきた内容から試験対策に使える疑似問題を作ってみました。
問題右端の+ボタンで答えが出てきます。
問1:硝酸メチルについて誤りの数は?
①.硝酸とアルコールの反応生成物
②.芳香と甘味がある
③.引火性・爆発性がある
④.引火点は10℃より低い
⑤.引火・爆発すると消火は困難
間違いは1つ、①②③⑤は正しいです。
問2:硝酸エチルについて正解の数は?
①.白色の固体である
②.比重は水より小さい
③.引火点は硝酸メチルより低い
④.火薬庫に貯蔵しなくても良い
⑤.溶媒に溶ける
正しいのは3つ、①②は間違いです。
問3:ニトログリセリンについて誤りの数は?
①.透明の油状液体である
②.水によく溶ける
③.NaOHのアルコール溶液で非爆発化
④.8℃で凍結し非爆発性になる
⑤.一般の危険物倉庫に貯蔵する
間違いは3つ、①③は正しいです。
問4:ニトロセルロースについて正解の数は?
①.白色の綿状固体である
②.窒素含有率が高いほど安全
③.水・アルコールで湿潤にして貯蔵
④.燃焼後は窒素酸化物を発生する
⑤.消火にはハロゲン化物を使用する
正しいのは3つ、②⑤は間違いです。
問5:セルロイドについて誤りの数は?
①.ニトロセルロースを含む
②.自然発火する
③.粗悪品・劣化品は発火点が上がる
④.通風が良く低湿の冷暗所に貯蔵
⑤.固体なので衝撃・摩擦に強い
間違いは2つ、①②④は正しいです。
危険物 第五類(乙5)の物質で指定されている硝酸エステル類:硝酸メチル・硝酸エチル・ニトログリセリン・ニトロセルロース&セルロイドについてはここで一区切りです。
お疲れさまでした!
…このページの3つは数値と反応性はあまり問われないので貯蔵方法・消火方法や特記事項を重点に見ると良いかもです…。
■危険物 第五類(乙5)ページ一覧
①:第五類の概要
②:有機過酸化物
③:硝酸エステル類 ◀NOW
④:ニトロ・ニトロソ化合物
⑤:アゾ・ジアゾ化合物
⑥:ヒドラジン・アミン
⑦:その他 政令で定めるもの